「バタバタしてまして」と「ぱたぱた」

「ここのところバタバタしてまして…」と言ったり書いたりする人がいる。何かといそがしくて…、くらいな意味か。これに続けて、例えば「連絡しなくてごめん」とか「原稿が遅れて悪い悪い」などがくっついて言い訳になるようだ。注意して観察していると、けっこうな数の人が日常的に使っている。

この表現を使う人は、言外に「いちいち説明してられないけど、理由はそれなりにあるので分かってね。」とにおわせたいのだと思う。聞いてもいないのに「細かい事情は外部の方には言えません。」と機先を制する姿勢も嗅ぎ取れる。もともとはバブル経済期に広告業界の一部の人々が使い始めた表現である気がするのだが、どうだろうか。語源をちょっと知りたい。

私の個人的な体験では、「バタバタしてまして…」とよく言う人に限って、大した日常を送っていない傾向があるように思う。あなたが言いますかという感じ。たしかに便利なものいいなので、つい私も「バタバタしちゃってて…」と言いそうになって慌てて言葉を吞み込むことが最近でもよくある。しかし「バタバタしてる」って、駄々っ子じゃないんだから具体的にどんな状態を言うのだろう。

いっぽう「ぱたぱた」は、北陸の山奥に出るお化けのこと。

手取川の支流では、川のそばにある博物館のような施設の一角を宿泊用に借りて調査をしました。…この建物には「お化け」が出るといううわさがありました。お化けの名前は「ぱたぱた」。姿は見えず、スリッパかサンダルで歩くような、ぱたぱた、という音が夜聞こえるというのです。…真夜中の三時頃だったでしょうか。ふと目を覚ますと、階段をあがってくる足音が…。(『イワナをもっと増やしたい!』/中村智幸著/第七章より)

さあこの後中村さんはどうなってしまうのか。フィールドでのこんな楽しいエピソードも満載のサイエンス・エッセイ『イワナをもっと増やしたい!』(フライの雑誌社刊)が、紀伊国屋書店BookWebのカテゴリ別ランキングで第1位になりました。おかげさまで好評です。