NHKラジオ「石丸謙二郎の山カフェ」に、弊社刊『ムーンベアも月を見ている』著者の山﨑晃司先生がゲスト出演しました。
「うわあ、大きな方がお見えで。クマみたいって言われませんか。」。パーソナリティの石丸さんから、いきなりいじられています。気持ちはわかる。「研究者は研究対象に似るというのは昔から言われていることで(笑)」。山﨑さんの返し良好。いい感じで始まりました。

身長180センチ。
9月20日
『緊急!山の #クマ 事情を考える』
🐻クマ研究の第一人者 #東京農業大学教授 の#山﨑晃司 さんのお話は
#聴き逃がし でもぜひ☛https://t.co/gtYLiJsuHv pic.twitter.com/Vx2PKTsP8D— らじる (@nhk_radiru) September 20, 2025
【聴き逃し】NHK 石丸謙二郎の山カフェ『緊急!山のクマ事情を考える』 山カフェをきく 9月20日(土)午前9:05放送2025年9月27日(土)午前9:55配信終了
以下、山﨑さんの発言から一部抜粋して編集しました。
森のあるところクマがいる。身近な動物になった日本のクマとの新しい付き合い方。登山者の目線で。「クマさんにクマの話を聞くという」。
最近のクマの動向について
「わたしも正確にはわからないんですが、人の前でのクマの行動が変化している」「人を脅威と見做していないクマが一定の割合で増えている」「クマは基本的に単独生活者なんです。母グマと子グマが一緒に暮らしている機会に、縦で母グマから学ぶ可能性があります。」「クマに縄張りはないので」
「羅臼の悲しい事故は知床財団さんのHPで報告されています」「おそらく最初は防御的な攻撃を受けて」「最近ではMTBなど、人間の動きが速いとクマにとっては対応できなくなるので、あまりいいことではないかなと思います」
「人間が大人数で活動すればクマの攻撃も減っていくという統計がでています」「知床の残念な事故は有名な親子グマでした」「普通は人間と会っても逃げるかブラフチャージです」「上高地のキャンプ場でソロキャンプが攻撃された事故は登山者の残飯も含めてそこにクマが居着いていた」
クマのことをもっと知ろう
「ふつうの犬よりも嗅覚が優れている猟犬よりも、クマはさらに数倍も嗅覚が優れている」「クマは嫌いな匂いがないんです」「刺激臭が大好き」「養魚場のペレットの匂いがわかる、死魚に来る」「気温が高い時は川に体をつけます。犬かきみたいに泳げます」「捕食目的でないので水中へは追ってこない」
「人間を捕食目的で襲うことは皆無ではなくても、まずない」「クマ鈴を気にしないクマも、これからは出てくる可能性はある」「でも効果がないわけではないので登山時にはクマ鈴を持つことを推奨します」「300頭か400頭のクマを生捕りしていますが、クマにも性格の個体差があると思います」
「一般的にオスの方が喜怒哀楽があります」「クマは春から秋に痩せていくんです。9月のドングリで体力を回復させます」「秋の木の実の豊作不作でクマの体力が左右されます」「クマを対象とした給餌はクマではない動物へ幸福をもたらす可能性があります」
クマと人間のいい関係
「海外で使われているフードコンテナに食物を入れればクマが匂いを感知できない。携帯用のコンテナもあります」「クマは人間を捕食するために攻撃してくるのじゃない」「クマに会わないために、山へ入る前にクマの情報を登山者が集めて知ることが大切です」「秋田では〝クマップ〟が公開されています」
「登山者は山にクマがいるという前提で行動することが大事です」「クマはいるんです」「クマが先に人間に気づいてくれれば普通は立ち去ってくれます」「風がつよいとき、水音が大きい場所では気をつけましょう。クマも人間もお互い突然会ってしまうのが一番危険なので」
「本当は危ない状況になった時は、管理者の判断で登山を規制するとかの施策が、日本でも今後は必要だとわたしは考えています」「会ってしまって人間ができることはあまりない」「運ですね」「ゆっくり下がると言われていますが」「クマに会う時はけっこう瞬間的なので、会ったらどうするという正解がわからないんです」
クマスプレーは効果的か
「米国製品でEPAマークがついているもの」「クマスプレーは飛行機に載せられないので、現地ビジターセンターなどでのレンタルが最近は増えています」「貸し出す時のインストラクションが大切です」「経験上、クマを5mくらいまで引きつけて腕をまっすぐにして粘膜にむけて撃つことです」
「クマによる怪我は顔面頭部に集中するので、闘わない方がいいと思います。腹ばいになって手を組んで首筋を、肘で顔面横をまもる防御姿勢」「市販のクマスプレー全てが有効ではないと思います。安いからと言って買うのは」「海外の信頼できるクマスプレーには主成分のカプサイシンが2%以上含まれていることという基準があります」
「冬山での調査時に、研究仲間からわたしとクマ両方にクマスプレーをかけられたことがあります。その時は、、、」
これ、『ムーンベアも月を見ている』に出てた話。気の毒だけど腹を抱えて笑ってしまった。
森のあるところクマがいる
「クマは夜行性ではなくて昼行性です。夜明け前後、日没前後に多く行動します。食肉類ですが基本的には植物質に寄った雑食性です。肉食ではありません」「分布域も広がっているし個体数も増えています。四国九州を除いて、全国どこに行ってもクマがいる前提で行動していただきたいと思います」
「山、森に入る時はクマとこれ以上、無用なトラブルを起こさないようにしていただきたいです。山、森はそもそもクマがいる場所ですので」「じつは今日これからクマの調査で秋田県へ行ってきます」
山﨑先生、分かりやすくてよかった!

『ムーン・ベアも月を見ている クマを知る、クマから学ぶ 現代クマ学最前線』(山﨑晃司著) フライの雑誌社刊。
ムーン・ベアも月を見ているクマを知る、クマから学ぶ 現代クマ学最前線
内容紹介
1〝クマの人〟になるまで
クマとの出会い
丹沢のクマを追う
目の前にクマがいる!
アフリカ・ザンビアへ
ライオンには個性があった
奥多摩のツキノワグマ調査を始める
クマをもっと見たい! 知りたい!
〝クマの人たち〟の一員として
2 世界のクマ、日本のクマ
2-1 クマは世界に8種類いる
2000万年前、クマの祖先が登場した
日本のクマは2種類、どこから来たか
三日月状の白い斑紋があるから「ムーン・ベア」
背中丸見えで冬眠するクマ
2-2 森のあるところ、クマがいる
畏怖される存在としてのクマ
日本のクマは何頭いるのか
里山、街中に出没するクマが増えている
大阪のクマが引き起こした騒動
身近になったクマとの付き合い方を考えよう
3 クマと遭ったらどうなるか
3-1 クマと遭ったらこうなった
〝やってはいけない〟ことばかりやった
クマに遭わない工夫をしよう
クマ避けスプレーは有効か
(まずい!)と思ったその瞬間
クマの方から気づいてもらうために
3-2 クマが人を攻撃するとき
ツキノワグマの人身事故は世界一多い
クマは凶暴な動物か
ヒグマよりツキノワグマの方が事故を起こしやすい
ツキノワグマは〝ドキドキ〟している
それでもクマと遭ってしまったときの対処法
K市の人身事故から何を学ぶか
日本のクマを追いつめる前に
3-3 あるオスグマの生涯
クマに遭うのは宝くじ当選なみ
ルパン三世の発信器
夢の「衛星首輪」登場
新しいクマ研究が始まった夜
ある足尾のオスグマ
養魚場の甘く危険な香り
4 クマを追いかけどこまでも
4-1 東京にもクマがいる
高尾山を歩くクマ
つるつるの山肌
クマの分布をどこまで認めるか
4-2 九州のクマに遭いたくて
クマの捕獲数は激減した
大分のクマはどこから来たか
九州グマの大調査を行なった
状況は非常に厳しい
かつてクマは神聖な動物だった
遭いたくても遭えない
4-3 四国のクマは追いつめられている
人が減り、クマも減った
絶滅へのカウントダウン
四国でがんばる〝クマの人たち〟
狭い尾根筋を行ったり来たり
クマを脅かす大規模風力発電
〝クマの人たち〟が四国に集ってきた
四国のクマを増やすには
クマをとりまく地域社会の本音
4-4 韓国の山にクマを追う
山を走る韓国のおじさん
危機的状況にある韓国のクマ
国外からクマを連れてくる
オオカミ、クマの再導入はむずかしい
韓国のクマ再導入に学ぶべきこと
5 クマを知り、クマに学ぶ
5-1 生け捕りにしてつきまとう
知らないこと、分からないことだらけ
クマの生態と生理を解明したい
スカンジナビア・ヒグマ研究プロジェクトはすごい
ヨン・マーティンと二人の学生
国際色豊かになった足尾のステーション
「クマと目が合った!」
自分でロガーを取り出すクマ
8月のクマは飢えている
クマにも色々な都合があるのだろう
5-2 ある日、クマをつかまえたら
顔で識別するのは難しい
毎年20〜30頭を捕獲する
深夜の研究室から山を目指す
クマのハンドリングの実際
吹き矢で麻酔を打つ、鼻をつねる
身体のすみずみまで調べる
採血、組織採取、首輪とロガーの取り付け
山から研究室へ、また山へ
5-3 放射性物質とクマの暮らし
2011年3月11日
心に残った大きなしこり
足尾のクマも放射能に汚染されていた
情報を開示したくない上層部
クマの汚染度が高い理由とは
放射能汚染は奥多摩までも
山の幸、川の幸はどうなるか
原発事故という人災を忘れない
6 いとしき〝クマの人たち〟
6-1 奥多摩の猟師、国太郎さん
国太郎さんとの出会い
猟師の黄金期
すべての獣肉は貴重品だった
「お父さんが元気なうちに」
「クマも悪ささえしなければいいんだが」
本当はどんな風に思っていたんだろう
6-2 〝クマの女の人たち〟
カレン、ガブリエラ、熊のKさん
豪快なメイシュウ・ワン
台湾のツキノワグマ事情
「研究者は保全のために何ができるか」とメイは言う
6-3 『ベア・アタックス』のヘレロさん
名著『ベア・アタックス』
奥多摩に来てくれたヘレロさん
そうして親子グマは表紙になった
7 クマが教えてくれる私たちの未来
7-1 社会の仕組みを変えるとき
ダウンサイジングの日本へ
人口減のメリットもあるはず
7-2 これからのクマ類管理の道すじ
クマを減らせばいいわけではない
鳥獣専門職員を採用した島根県
現場とマネジメント、研究の三位一体
8 ロシア沿海州・クマ探検記
ロシア人、やるなあ
ヒグマ、ツキノワグマ、トラ、ヒョウが同じ場所にいる
夢にまで見たシホテアリンの森
捕獲の準備だけで3年がかり
ついにクマがかかった!
9頭のクマの追跡が始まった
ヒグマとツキノワグマ、それぞれの暮らしぶり
変化しつつある沿海州の森で
あとがき
あなたも〝クマの人〟になりませんか
もっとクマを知りたい方へ
KUMA Column クマコラム
01 なぜクマに惹かれるのか ─やっぱりクマが好き
02 山に入る装備、教えます
03 クマに名前をつけないわけ
04 私の知っていたクマたち
05 クマは上手に泳いで移動する
06 クマをほいほい誘う餌
07 クマ観察の革命、赤外線デジタルカメラ
08 シカの呪い、クマの呪い
09 野生動物の取り扱いと倫理
10 研究費を確保せよ
11 博物館へようこそ!
12 間違って捕られたクマはどうなるか
13 クマ引き取ります
14 上空からクマを追う

身長180センチ。

『ムーン・ベアも月を見ている クマを知る、クマから学ぶ 現代クマ学最前線』(山﨑晃司著) フライの雑誌社刊。