水口憲哉氏の新刊『原発に侵される海―温廃水と漁業、そして海の生きものたち』(本誌第106号で紹介)の書評が、2015年12月13日付の南日本新聞に掲載されています。評者は加藤真氏(京都大学大学院教授)。
『原発に侵される海』をたいへん分かりやすく、要点を射抜くように紹介している書評文からの抜粋を以下に記します。
原子力発電所の危険性は巧妙に隠されてきた。そう、2011年3月11日に起こった事故までは。
原発は事故が起こらなくても多量の温廃水放出という形で周辺の海に深刻な影響を与え続けていた。
温廃水の中には、付着生物を殺すための多量の薬剤や、配管から解け出た金属、そして放射能さえも含まれている。
信じられない話であるが、温廃水が漁獲量や生態系に与える影響を科学的に調べた論文が日本ではほとんどない… それゆえにこの著者は異端視されてきたし、それらの力に抗した本書は貴重である。
今日、福井地裁で、関西電力高浜原発の再稼働を認め、大飯原発3・4号機の差し止めを覆す判決が出されました。日本の政府・行政・司法は、福島原発の大事故を忘れてしまったのか、忘れたがっているのか、忘れさせようとしているのか。
本書評は次の一文で締めくくられています。
本書は、大間原発の新設や、既存の原発の再稼働の是非を住民が判断するときも、重要な判断材料を提供するにちがいない。
水口憲哉氏は次号第107号にも「釣り場時評」(産業管理外来種とは何じゃらほい:ニジマス)、「水辺のアルバム」(エビガニ=アメリカザリガニ)の2本を寄稿してくださっています。