「こんにちは! サトウと言います。」
世の中がお盆休みのうだるような暑い昼下がり。明るいサトウさんが、白昼アポなしで訪ねてきた。「社会をよくする運動をしています。」と言う。
お引き取りいただくと、サトウさんはうちの隣りの家へ横移動。ピンポンの音が聞こえた。「こんにちは! サトウと言います。」
ドアを開けて隣りのおじさんが出てきた。
「こんにちは! 社会をよくする運動をしています。今日は…」
サトウさんが次のことばを言う前に、隣りのおじさんは
「わたしはね、年寄りでヒトリモノで、社会とか関係ないんです。」
と、大きな声で叫ぶようにかぶせていた。
サトウさんの「社会」と、隣りのおじさんの「社会」と、わたしの「社会」は同じじゃないだろう。どう違うんだろう。みんなに共通する「いい社会」はあるんだろうか。
答えのでない問いにとらわれた心に、オイカワ釣りはよく似合う。