「人が集まる」ショップの条件

都内JR沿線のフライショップさんから携帯に留守電が入っていた。2010年『フライの雑誌』カレンダーや書籍の注文をしたいとのこと。たまたまその路線に乗っていたのでその足で途中下車をして、ご用伺いでお邪魔することにした。留守電返すより早い人間便である。

このお店は平日でもつねにお客さんの出入りがある。年齢層は様々だが、30代、20代の方が多いのが特徴的だ。少子高齢化まっしぐらのフライ界にあってこれは希有なことだ。市場の将来性を考えれば当然若者が多い方がいいのに決まっているのだが、その当然の然がうまく機能していないのが、いまの日本のフライフィッシングである。このままゆけば業界は早晩破綻する。

業界の先行きと個人の趣味としてのフライフィッシングの関連性については、『フライの雑誌』連載の「フライファン「適正増」戦略のご提案」シリーズ(増沢信二著/バックナンバー第82号〜第86号まで掲載済)にくわしい。以前のブームの時のように人が多すぎる状況ならともかく、クシの歯が抜けるように同好の士が減少してゆく現状は、基本的には大いに嘆くべきことであると思う。そこへ有効な対応策を打てないギョーカイの方々への筆者の切歯扼腕と、ご本業での経験に基づいた具体的な提案が同シリーズのテーマになっている。

全国の釣具店さんと直に取引させていただいている小社は、景気の上がり下がり(上がることはあまりないけど)を、如実に肌で知ることができる。ここ10年、釣り具業界の景気は落ちる一方である。とくにこの5年の落ち込みはひどい。が、こんな不景気の中にあっても、全国には「人が集まる」フライショップがいくつもある。「人が集まる」お店では、お客さんもお店の人もみんな楽しそうだ。そこにはお互いを認め合った共生関係とでもいうような、幸せな連携がある。

そしてそれら「人が集まる」ショップには、ある明白な共通項がある。お客さん側ではなくてショップ側の心がけの問題だ。どのショップさんでも明日から実行できる、かんたんなことだ。とても分かりやすくお金もかからない。そしていちばん喜ばしいのは、釣り具を扱おうと志した方にとっては、それはまちがいなく、自分自身もお客さんといっしょに楽しめる事柄であることだ。先のJR沿線のお店がまさにその典型である。楽しくない店にお客は来ない。

タネをここで語ってしまうとつまらないんで、ここから先にご興味のある方は、『フライの雑誌』連載の「フライファン「適正増」戦略のご提案」(増沢信二著)をどうぞ。次号87号にも載ります。面白くて役に立つ雑誌。うつくしい。