「内容の近い他の記事も併せてどうぞ」

我が社のウェブプロデューサー氏(以下P氏)が、フライの雑誌社ウェブサイトのデータベースをバージョンアップしてくれた。7月のサイト全面リニューアルに続いて、今度の新機能もスゴい。なにが変わったか。

この駄文の各記事内容をサーバが自動的に分析し、蓄積してあるバックナンバーから、関連する過去記事を自動的に呼び出す。その結果を記事下部の「内容の近い他の記事も併せてどうぞ」というリンクで、自動的に表示してくれる。どうも「自動的に」という表現が多いが、実際自動的なんだし、私には自動的以上に説明する能力がない。

これは我が社が契約しているレンタルサーバ会社が導入した最新のサーバ機能らしい(P氏に言わせれば〝待ちくたびれたくらい〟だそうだ)。すでに全バックナンバーにおいて稼動している。各記事下部の「内容の近い他の記事も併せてどうぞ」をクリックしてみてください。我が社のP氏はウェブ上の新しいこと、面白いこと、もっと遊べることへ常に目を光らせている。だからこの機能もP氏の判断でいつまで採用されているかどうかわからない。今のうちにどうぞ。

私もさっそく試してみた。14年間の膨大な蓄積からサーバがそれこそ自動的に関連ワードのみで過去記事を掘り起こしてくる。そこには重要性にもとづく順列配置や取捨選択といった、人間の判断による編集作業が一切介在していない。逆に言えば、機械に一定の恣意をもたせて、世間に知らしめる情報とそうでない情報を分別して操作することも簡単だろう。そしておそらくその時代はもう始まっている。〝グーグル八分〟なんて言葉もとっくにあるわけだし。

スローでハッピーなフライの雑誌社ウェブサイトの場合、最新のデータベース機能を導入したからといって、まったく社会的に一切なんの影響もない。筆者が過去の自分の恥ずかしい行状を掘り起こされて赤面するくらいがせきのやま、というくらいの罪のなさだ。

お、と思ったのは、途中で意識的に変えたとはいえ、これを始めた頃の記事と最近の文体のテイストがまるで違うことだ。最初のころのは肩ひじ張っていて自意識過剰でお前だれだという感じ。そんなのが掘り起こされると、うまくいかなかった初デートの様子を誰かが撮影していて、それを数年後にアルタビジョンでプレイバックされているような悶絶感がある。

いずれにせよなにかの暇つぶしにしていただければ私どもはそれで幸せです。