今、日本には稼働中の原子力発電所が17あり、54の原子炉が動いているが、いずれも海辺の過疎地といわれるところに立地している。
自由化・貿易立国路線の中で林業も漁業も農業も衰退し、経済的な疲弊が進む地域に対し、国と電力会社は原発安全神話をつくり出し、「原発ができれば道路も関連工場もできて地元雇用も増え、人口も増える」と宣伝し、多額の交付金を用意し、公権力まで使った激しい原発誘致を進めてきた。
そんななかでも原発反対をつらぬき建設を阻止した地域が、建設された地域より数多くある。農業や林業、そして漁業の先行きを暗くする政治が続くなかで、このカネの魅力をはねのけることは容易なことではなかったはずである。…
原発候補地となった福島県浪江町棚塩地区の農家はこの20年間、
(一) 原発に土地は売らない
(二) 県、町、開発公社とは話し合わない
(三) 他党と共闘しないという三原則に立った反対運動を続けてきた。…
「原子炉の安全性や放射線の子孫への影響など、人類の未来に責任を負える原子力の体制はない。この村で暮らそうという人間に責任をとれない原発は不要なんだ」…
この村で暮らし続けるというところから、原発をとらえる。そして、暮らし続ける人間に責任をとれない原発はいらないという。
(農文協の「主張」2011年6月号より
権力を持って迫ってくる相手と話し合いのテーブルについた時点で、住民は負ける。
原発に限らず、今までぜんぶそうだった。
話し合いが成立するのは、権力者対権力者の構図の場合だけ。
で、そんな話し合いを茶番と言う。
いつまで騙されるのか、まだ騙されたりないのか。