「早く大人になりたいな」

「早く大人になりたいな」

「なんで」

「大人になってお金かせいで、お母さんに楽させてやるの」

「おまえはえらいな。お母さんにどんな楽させてあげるの」

「掃除機とか買ってあげる」

「お父さんは」

「お父さんは余裕ができたらでいい」

「そうか。お父さんもたのむよ」

「大人になったら、犬も飼うんだ」

「いま飼えばいいじゃん」

「おれアレルギーだから。大人になれば治る」

「そうか。おまえはえらいな。大丈夫だ。大人になるの楽しみだな」

(他の子が割って入って)

「ぼくもねぼくもね。早く大人になって自由の身になりたい」

「いまは自由じゃないのか」

「自由じゃない。毎日やることと時間が決まってる。朝は7時15分に起きて学校行くし」

「おまえはばかか。いいこと教えてやる。大人になったらもっと時間の自由はなくなるぞ」

「そうなの」

「そうだ。しかし時間は自由じゃなくても、心は自由になれる。おれを見ろ」

わたしは毎日、けっこうたのしい。

子どもと桟橋と子どもの影
子どもと桟橋と子どもの影

ハゲじゃないです、ボウズです。
ハゲじゃないです、ボウズです。