「湧水100パーセント掛け流しの釣り堀」へ行った。 Post:2013/12/122013/12/12 こんなちっぽけなわたしでも、いままで生きてきた間に影響を受けたと思う大事な人がいる。自分にとってそういう大事な人が立て続けに二人いなくなった。だまって仕事場にいると例によって余計なことをいろいろ考えだしてしまうだろう。そうなる前に逃げるように釣りへ行った。行ったのは『葛西善蔵と釣りがしたい』で、キャバ嬢なまあちゃんがハイヒールでニジマスを無造作に踏みつぶしていた管理釣り場。 ここの魚はどれも幅広で信じられないほどパワフルだ。魚が強すぎて竿がかわいそうだから竿を替えよう。向こうに超デカなわんこが見えます。ぬいぐるみではありません。「うわ、あの犬、デカー」と知らない誰かが言っていた。 がんがん釣る。ばんばん釣る。釣るったら釣る。気がくるったように釣りまくる。釣っている間は余計なことを考えなくてすむ。機銃掃射されるみたいに釣られるニジマスたちには気の毒だが、すまん、今日はそういう日だ。無心に釣り続けていればその内どんな余計な考えも、絡んだ糸が勝手にほどけるみたいにうっちゃれることをわたしは知っている。ところでひとつ疑問。いい型をかけて「サ、シ、ミ! 」コールしながら寄せてくると必ずバレるのはなぜ? ここの管理釣り場の場長がニコニコ笑いながら隣にやって来た。8年前、『フライの雑誌』第69号に「湧水100パーセント掛け流しの釣り堀」という温泉レポートみたいなタイトルの文章を寄稿してくれた場長だ。わたしが使っていた扱いづらいグラス竿を「はい」と渡したら、「へー」とか言いながら初めて振るのに見事にわがもののように操って、わたしには見えない魚を見て釣った。取り込みの所作にもまったくむだがない。さすがである。 この巨大なわんこは友人の相棒なわんこです。繰り返しますがぬいぐるみではありません。いい釣りした帰りは、ちあきなおみを爆音ドライブ・ハイウェイ。わたしはふだん、〝釣りに助けられる〟みたいなことは安易に口にしないようにしている。でも釣りにはそういう効果はたしかにある。今日は気のおけない釣り友だちと一日楽しく釣りをした。今日はとてもいい日だった。明日もいい日になるだろう。わたしは大丈夫だ。 ・ 『葛西善蔵と釣りがしたい』〈2013年末特別大感謝セール〉は12月12日(木)から。特設ページ 長い前説