『フライの雑誌』第86号特集◎「辺境を釣る」に寄稿してくださって、『Backcasts: A Global History of Fly Fishing and Conservation』の日本側の編集者で拙稿を英訳してくださった北海道大学の白岩孝行さんが、昨年末にNHKの「視点・論点」に出演された。その内容全文が、NHKのウェブサイトでテキスト公開された。
演題は「オホーツク海 豊かな恵みを守るために」。
それまでは問題を引き起こすのは、上流側に位置する中国やロシアであり、我々は影響を受ける側であるという暗黙の前提に立って議論に臨んでいた我々は、福島第一原発の事故を受け、一向に明らかにならない海洋汚染の情報を大陸の研究者に説明しなければならないという立場に陥りました。この時、環境問題というのは被害者・加害者の立場は時として入れ替わり、それゆえ双方が謙虚になって国境を越えて議論しなければ解決には至らないということを痛感しました。
極東ロシアは、私たちの住む日本の風上、川上に位置しています。もしこの地でなんらかの大きな環境問題が生じれば、それは風の流れ、川の流れ、そして海の流れによって日本にもたらされます。
環境に国境はありません。
〝環境問題は時に加害者と被害者が入れ替わる〟〝環境に国境はありません〟が刺さった。きっちり文字に起こしたNHKさんにも拍手。
自分の立場で言うべきことをはっきりと、しかも大人の言葉で世間へ伝えられる科学者はじつは少ない。
こういう白岩さんと金魚釣りしました。
※『Backcasts: A Global History of Fly Fishing and Conservation』(シカゴ大学出版局刊)の小社編集人・堀内担当章の和文原文にご興味を持ってくださる方は編集部までご連絡いただければ対応します。本誌読者の方に限ります。