『イワナをもっと増やしたい!』発行から一週間

12月20日発行の小社刊『イワナをもっと増やしたい!』へ、各地の水産試験場、水産行政、水産系大学、漁協から多数の注文をいただいている。著者の中村智幸さんによるPRのおかげだ。自著のPRというのはなかなか気恥ずかしいものだが今回中村さんは精力的かつ細やかに、専門分野の各方面へ的確に本の情報をリリースしてくださっているので、本当にありがたい。購入を申し込んでくださったのは今後日本のイワナを増やす上で扇の要となるだろう組織と個人の方ばかりだ。
岩波新書に『イワナの謎を追う』(石城謙吉著/1984)という名著がある。根室の高校生物教師だった著者が仕事の傍らフィールドワークを重ねて、自らの好奇心の求めるままにイワナの生態に関する疑問を追いかけるもので、平易な語り口が幅広い層へ支持されて今なお長く読み継がれている。『イワナをもっと増やしたい!』の企画で中村智幸さんと初めて打ち合わせした折り、『イワナの謎を追う』のような本を作りたいですね、と言い合った。その時の私たちの思いは今回の本へうまく反映できたはずだ。
『フライの雑誌』第77号の「日本釣り場論」インタビューで、中村智幸さんは「これから5年後の渓流域の釣り場管理は変わります」と宣言してくださった。この20年、日本の渓流釣り場は釣り人、漁協、行政、研究者を巻き込んで、多くの紆余曲折と試行錯誤を経てきた。現在の渓流釣り場のありように満足している人もいるだろうし、不満を持っている人もいるだろう。『イワナをもっと増やしたい!』がこれからの渓流釣り場の様々な理想像を映すひとつのプリズムになればいい。私は5年後、10年後の日本の渓流釣り場が今とても楽しみになってきている。