『イワナをもっと増やしたい! 「幻の魚」を守り、育て、利用する新しい方法』(フライの雑誌社新書)は、開発や温暖化、乱獲に追われている渓流の王・イワナの不思議な生態を紹介し、これからの時代にどうすれば守り増やしていけるかのたくさんの具体案をご案内する楽しいサイエンス・エッセイだ。2007年12月の初版発行以来、おかげさまで各方面から高い評価をいただいてきた。
最近になって、渓流魚の人工産卵場造成が各メディアでとりあげられる機会も多くなっている。人工産卵場造成の技術を日本ではじめて確立したのは『イワナをもっと増やしたい!』著者の中村智幸博士だ。現在出回っている情報は『イワナをもっと増やしたい!』を原典としている。天然野生のイワナを守り育てる人工産卵場造成の技術が世の中へ広まってゆくことに、版元として大きな喜びを感じる。
このたびの重版では初版時の文言に一部手を入れた。また、カバーを新しくして〝イワナ本の新定番〟と銘打った。いわゆる〝イワナ本〟としては、岩波新書の名著『イワナの謎を追う』(石城謙吉著/1984)がとても有名だ。じつは初版編集時に、この『イワナをもっと増やしたい!』は次代の『イワナの謎を追う』を目指しましょうと、中村氏と夢を語り合った。多くの方々に支持されての今回の重版で、その夢へ一歩近づいたことになるかもしれないと思うのは、僭越すぎますよね分かってます。まだまだです。
『フライの雑誌』次号88号では、中村智幸氏ご本人に登場していただき、『イワナをもっと増やしたい!』発行以降の日本の渓流魚をとりまく状況の大きな変化について、分かりやすく解説していただくインタビュー記事を掲載する。これまでまったく表に出ていない新事実も紹介する。お楽しみに。