『オールカラー版寿司ネタ図鑑』(小学館/1997年初版)という本がある。A5版オールカラー128ページ。
内容はタイトル通り、寿司ネタの図鑑である。ページの上半分にでっかく寿司を1カン、下半分にネタ(魚や貝)の生態写真を配置するというシンプルで最高のレイアウトだ。
寿司好きの私は10年ほど前にたまたまこの本を書店で見つけ、一目惚れしてその場で購入した。一時期は枕元に置いて毎晩寝る前にこの本の数ページをめくるのを睡眠導入剤にしていた。
だが2年前の事務所の引っ越しのときに、大事にしていた『オールカラー版 寿司ネタ図鑑』がどこかへ行ってしまった。半狂乱になって探したのだけれど見つからなかった。
で、このたび再び手に入れました、『オールカラー版 寿司ネタ図鑑』。いま手にとってパラパラめくって、なんだかとてもうれしい。シロゲンゲという妙ちきりんな寿司ネタを知ったのもこの本だった。とある寿司屋のお品書きでシロゲンゲを見つけて大喜びで注文したら、あんまりうまくなかった。
今はどうやら『オールカラー版 寿司ネタ図鑑』の電子書籍版も出ているらしいのだが、まったくそそられない。『オールカラー版 寿司ネタ図鑑』的な奇書は、物体の本として所有することに意味がある気がする。
だって私はべつに寿司ネタの情報が欲しいわけではない。風土に応じた多彩な寿司ネタを追求している全国各地の寿司職人の心意気と、それを手間ひまかけて一冊の本にまとめたいとがんばった編集者の情熱に惚れている。寿司のレシピを勉強しようと言うのじゃない。
そういえばここ数年(自分のお金で食べる)お寿司は、くるくる回っているのばっかだな。
発行が遅れまくっている『フライの雑誌』次号の入稿締め切り直前、8月の暑い午後である。
目の前で ミンミンゼミが 泣いてるよ (詠み人知らず)