●四釜裕子さんのブログ「bookbar5」で、こんな試みが紹介されていた。
北村ヂンさんの「『タッチ』全一巻を作ろう。」。
まずあだち充の『タッチ』を全巻裁断してスキャンして電子化する。あだちモノはページ数のわりに台詞が異様に少ないから、電子化したくなる気持ちは分る。
この方は裁断したあとに残った膨大なパラパラ『タッチ』を、もったいなからと言って今度は逆回りでのり付けして製本するという、いわば逆自炊をされている。
全26巻の全ページをぜんぶくっつけて一冊にしたら重量4キロ超え、横幅は両手に入りきらなかったとか。せっかく電子化したのに省スペースにもならないし手間ばかりかかるしなんだかよく分らないが、とにかく『タッチ』全一巻の迫力はすごい。ぜひ一見を。
●むかし、メッツ、ホフマン、ヒューバート(その頃はそう言ってたの)の3社のハックルケープから、ハックル一本一本をぜんぶ抜いてサイズごとに整理して数え、どのケープがいちばんお買い得か実験しようという企画をたてて、前編集長の中沢さんに提案したことがある。
普段はなかなか企画にOKを出してくれない中沢さんが「それ面白い、やろうやろう!」と大いにウケてくれてうれしかったが、3枚のスーパーグレードのハックルケープからハックルをぜんぶ抜いて数えるという、おそろしく気の遠くなるような作業をじっさいに誰がやるかと言えば、中沢さんがやってくれるわけはない。しまった、おれがやるのか。
けっきょく企画者の私が、一人で地道に数千本以上のハックルを賽の河原みたいに抜いちゃ並べ抜いちゃ並べてぜーんぶ数えきって、記事を書いた。数えきるのに一週間くらいかかった。
●当時は私も編集のほかに身すぎ世すぎの本業をもっていたから、ハックルを数えている間の本業はすべて停止した。でも次の号の『フライの雑誌』に私の作った記事が掲載されたのを見てなんだかとても充実感を覚えた。『フライの雑誌』の第45号、「釣り人の経済学:一番お得なハックルケープは、どれだ」という見開きの記事がそれだ。
そういえば3枚のハックルケープの購入費用も企画者の自分持ちであった。出しますよとは言われたが「どうせ自分でも使うからいいんです」と言って遠慮した。編集部が常に赤貧なのは知っていたし。そこらへんは当時も今もいっしょだねー。
●第45号は1999年3月の発行だからいまから11年前のことだ。自分が若かったのかもしれないが、そういうバカな遊びが編集仕事の醍醐味かもしれない。でももう一回やるかと言われれば、やっぱり考えちゃうかなあ。