『文豪たちの釣旅』(大岡玲著)が『スミセイベストブック』さん11月号の特集記事に。

住友生命さんの本の情報誌『スミセイベストブック』は住友生命さんが経営者・ビジネスマン向けに発行している月刊フリーペーパーです。営業マンの方が手配りで配布しています。

その『スミセイベストブック』さんの11月号メインの書評欄に、『文豪たちの釣旅』(大岡玲=著/フライの雑誌社刊)が採用されました。3ページに渡って紹介されています。

最初にお話をいただいたのは今夏8月。ご担当者様がたまたま『文豪たちの釣旅』をお読みになり感銘を受けて、ぜひ誌面で紹介させてほしいとのご依頼でした。ご本人自ら書評文の筆を執られたとのこと。ここでは下に写真で紹介するだけにとどめますが、『文豪たちの釣旅』の世界をぞんぶんに味わっていただいたことがわかるぬくもりある書評です。

本文に登場する文豪14人のなかで、今回の書評で大きく紹介していただいたのは開高健と幸田露伴の二人です。

文豪露伴は、若くして亡くした息子といっしょに釣りを楽しんだ思い出を、息子が亡くなったあとに娘の幸田文へなんども繰り返して語ったと、随筆家である幸田文自身が書いています。大岡さんは父と息子(文にとっては弟)をむすんだ釣りについて淡々と語る幸田文の文章を引きつつ、そのことについて、

たかが遊びの釣りが、生きることと痛切に交錯する時に放つ閃光。この世のすべてが、もろくはかない均衡の上に成り立っているからこそ、釣りでさえ時に哀切きわまりないものに感じる。明日をも知れぬ身の上の私たちにできることは、とりあえずの幸せの中で笑ってみることだけ、なのかもしれない。

と表現しました。

『文豪たちの釣旅』のなかでもとくに印象的なこの一文に、今回『スミセイベストブック』さんが注目し大きく紹介してくださいました。とてもありがたいことです。ちなみに小社編集部と長年親しいおつきあいのあるA氏は住友生命さんに加入しているそうです。おお。

記事の最終面には、「著者からのメッセージ」として、『スミセイベストブック』読者に向けて大岡玲さんが書き下ろしたコメントを掲載してあります。釣り師としての矜持と含羞をただよわせつつ、短いなかに大岡節のユーモアがにじみでているそのコメントを以下に紹介します。

はた迷惑だが、ノロケてみたい

恋人のことをノロケまくるのは、まことにみっともない。聞かされている方だって、恥ずかしくて困る。同様に、熱中している趣味がいかに魅力的であるかを、同好の士以外の人に語ったり書いたりするのも、はた迷惑なものだ。

でも、やっぱりノロケてみたい。そこで今回、同好の著名な先達をダシにして釣りの魅力を語る、という卑怯な変化球でノロケてみた。意外なことに、釣りの魅力についてノロケたつもりなのに、人生についてノロケたようなありさまになった。実に不思議である。

スミセイベストブック 11月号 表紙
表紙にカラーで書影を掲載していただきました
書評のタイトルは〝芥川賞作家が「釣り好き文人」との戯れを綴る一冊〟
柱コピーは「遊びの釣りが、生きることと痛切に交錯する時に放つ閃光」。本作品中の「幸田露伴」の項からの引用です。著者の大岡さんからのコメントも掲載されています。
えー、実はこの写真、先月『文豪たちの釣旅』発行を記念した打ち上げ(と称した都内コイの釣り堀での釣りと楽しい呑み会)が開かれた際の、大岡さんの釣り姿です。この日の釣りは相当渋かったにしても、大岡さんがたかが釣り堀のコイを釣って、あまりにも無防備にそこらの小学生のように大口あけて喜んでいらっしゃる様子がはっきり写っています。これはいくらなんでもいかがなものかとお蔵入り寸前だった一枚ですが、この際問答無用で公開します。楽しそうですねえ。この表情が大岡さんのお人柄そのものです。

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