昨日はフライの雑誌社の新刊『朝日のあたる川 赤貧にっぽん釣りの旅二万三千キロ』(通称赤貧本)著者の真柄慎一氏と、国立駅前のカフェで入稿前の最終打ち合わせをした。
国立駅周辺はさいきん急速にお洒落タウン化している。20年前は古本屋とスタ丼の町だったのに、変われば変わるものだ。歩いている人々もどことなく気取って見える。
真柄氏も私も筋金入りの田舎ものなので、「なんかすげえ町だね」「そうっすね」と言い合いながら、店構えは20年前とぜんぜん変わっていないロージナ茶房へ入る。「ここは変わってないな。入ったことある?」「ないっす」。
本当はロージナ並びの邪宗門へ入りたかったのだが、七色の髪の毛を持つ店主さんが亡くなってしまってからは空き家のままだ。閉まったままの重厚な扉には、この物件は売却予定です。賃貸はしません、と貼り紙があった。「すげえ入り口っすね。」と真柄氏。真柄氏の発言は基本的に語尾に「っす。」がつく。文章は違うので書籍化に際してはご安心を。
ロージナの二階で最終ゲラの読み合わせをする。二回読むあいだにお茶を二杯づつおかわりした。ロージナの紅茶はおいしいけれどコーヒーは私がたてる方がうまいように思う。
今年一番の暑さの中、わざわざ休みの日に出てきてもらって真柄氏にはお手数をかけた。でもこうして読み合わせができたおかげで、作品中のちょっとした疑問点も解消してよかった。ゲラを読み返していくうちに私のこころの中で、(この本はオモシロくなるぞ)という確信が急速に強くなっていった。真柄氏に伝えると「そうっすかね」と言われた。
打ち合わせが終わって店を出てから、真柄氏の友人で『フライの雑誌』連載時の最初に関って真柄氏をサポートしてくれた、A氏に電話をした。連載時のお礼と『朝日のあたる川』書籍化の報告をしたところ、A氏は「それはめでたい。では『朝日のあたる川』のアプリ版もだしませんか。」と突然のありがたいオファー。
じつはA氏はいま流行りの電子書籍の世界で、超売れっ子の制作者なのである。その場でいろいろな電子版のアイデアを提案してくれた。さすがだ。赤貧本はせいぜい私がpdfオンリーの赤貧電子版でも出そうかなと思っていたくらいなので、これは願ってもない展開だ。すごいぞ。
私は少々興奮しながら、隣にいる真柄氏にその場で確認した。
「Aさんがアプリ版作ってくれるって。やってみようか」
「そうっすね」
「あなたそれがどういうことか分かってないでしょ」
「そうっすね」
というわけで新刊『朝日のあたる川 赤貧にっぽん釣りの旅二万三千キロ』の電子書籍化もめでたく決定した。こちらは新書判が出てしばらくたってからの発行になる。まずは8月上旬に新書判を世に問う。
赤貧本の世界がどんどん広がっていく。多くの方が応援して力を貸してくれる。これも著者の人柄効果か。基本的に「そうっすね」しか言わないんだけど。そこがいいのか。
そうっすね。