南アルプスの麓に暮らす大藪賞作家、樋口明雄さんのインタビュー取材へ行ってきた。樋口さんといえば、作家生活初のエッセイ集『目の前にシカの鼻息』を小社から出版させていただいたばかりである。
今日は樋口さんに「鼻息」ゆかりの裏山トレイルを案内していただいた後、これも「鼻息」にでてくる近所のジンバ・フライフィッシングエリアで、二人して釣りをしてきた。
水温が下がってしぶい状況だったが、さすが地元の腕利きフライフィッシャーである樋口さんは、さくさくとよく釣っていた。作家というよりも漁師である。それで少しもいばらずあくまで紳士的で、ドヤドヤと「鼻息」も荒くしない。そんなところにも、出版業界の編集スズメに〝現代日本文壇随一のナイスガイ〟と賞賛される片鱗がのぞく。
ひるがえってこちらは最初ぜんぜん勝手が分からず、ただただ焦ってフンガーと「鼻息」を吹き出すのみ。終了間際になってようやくすこしいい型のマスをかけて、でかいのいやそうでもないのと、ここぞとばかりに大騒ぎしつつ、ひときわ熱ーい「鼻息」を、新緑萌えいずる南アルプスの山中にまき散らしてきた。ただちに健康に影響はない。
これだけ「鼻息」書いたんだから、『目の前にシカの鼻息』をよろしくお願いします。浮き世のあれこれもスコーンと忘れさせてくれる楽しいアウトドアエッセイ本です。自分もこんな山暮らししてみたいなあと、目を閉じて深呼吸したくなるはずです。
樋口明雄さんの心温まるインタビューは『フライの雑誌』次号に掲載します。