樋口明雄『酔いどれ犬』(角川書店)を読了。快作。舞台は都内杉並区阿佐谷。冒頭で殺される友人が住んでいたのは、私が借りようと思って内見しに行った集合住宅だったし、主人公が893の集団と立ち回りするのは、当時の彼女と大げんかした「青梅街道の珈琲館」前だったりするので、元阿佐ヶ谷住民としては、思わず読みがそこで止まっちゃう。
続いて同作者の『俺たちの疾走』(朝日ソノラマ)へ。正直言ってセンスがあるとは思えない表題と装丁と帯文なので期待できなかったのですが、私にはこれは気持ちよい小説でした。作品を読んでいる時間は作者に読み手の人生を費やしているわけで、いかに上手に掌の上で転がしてくれるかどうかが私にとっての作品価値です。『俺たちの疾走』の主人公たちは樋口作品ならではの青臭さをまき散らしているわけですが、それを青いと感じさせない作品力は圧倒的で、読み手はシアワセです。明らかに荒唐無稽なんだけど作品世界を信じたくなってしまう勢いは山田風太郎忍法帖に通じます。おすすめ。
http://www.bk1.co.jp/search/search.asp?kywd=%89%B4%82%BD%82%BF%82%CC%8E%BE%91%96&srch=1&Sort=za&submit.x=35&submit.y=10
奨められて花輪和一『刑務所の前』。前作『刑務所の中』(青林工芸舎)には捕縛されちゃった改悛の情がかすかに読みとれましたが、今作には皆無。すげえ。
それにしても「大江健三郎賞」なんて誰が待っていたんだろう。大江健三郎か。
One comment on “『酔いどれ犬』『俺たちの疾走』『刑務所の前』、そして大江健三郎”
Comments are closed.
2005/10/6 at 21:31
大江健三郎賞とは何か?
asahi.com: 講談社が「大江健三郎賞」創設 選考は大江氏1人講談社は4日、「大江健三郎賞」の創設を発表した。ノーベル賞作家の大江健三郎氏(70)が1人で選考にあたり、可能性、成果を最も認めた「文学の言葉」を持つ作品を受賞作とする。
大江健三郎、何をやり