届いたシカゴ大の『Backcast』の現物が予想より立派でビビり中。ほんとにわたしなんかでよかったんだろうか、という今さらながらのグジグジと、自分にしかこの内容は書けないはず、という根拠のない自信との狭間を、行ったり来たり。書き手の心理って、本当にややこしくてむずかしくてめんどくさいものだなと思う。
わたしはふだんは編集者だ。『フライの雑誌』や単行本へどなたかに原稿を書いてもらう前には、「大丈夫です、あなたには書けます。」と断言し、必要以上にあおって、書き手の気持ちをもり立てて、原稿をいただいてくる立場だ。その逆は経験がない。
今回は北大の白岩孝行さんが、『Backcast』の日本担当の編集者としてわたしを執筆者に選び、相手をしてくださった。しかも原稿を簡潔な英語に翻訳してくださった。版元側の編集者とのやりとりでは査読の過程で色々あって、わたしの強情のせいで、たいへんなごめんどうをかけたのだが、白岩さんはそんな素振りを見せない。本当にすごい方だ。
その白岩さんは、出来あがった本のページを開いて、あなたに頼んでよかったです、と仰ってくださった。あなたにしか書けない内容です、他の章にも引けを取らないですよ、と囁いてくださったので、こころが成層圏でフワフワしている。白岩さんは氷河研究、オホーツク海・アムール川研究で著名であるが、編集者としても超一流だ。聞くところによると、自転車のロードレーサーに乗っても、ものすごく速いらしい。何をやっても一流という方が世の中にはいる。
せっかくなので本書の他の章も読みたいが、ぜんぶ英語だ。がんばって、白岩さんおすすめの「13 Crying in the Wilderness: Roderick Haig-Brown, Conservation, and Environmental Justice」の章は読んでみます。白岩さんは来週はスイスへ氷河の研究旅行、その先はロシアで国家間の環境会議だそうだ。