川や湖の自然環境と魚の保護・増殖に関する行政窓口は、水産庁と各都道府県の水産担当(水産課など)だ。しかし河川湖沼の管理は、国交省とその行政システム(河川管理事務所、県河川課など)に委ねられているのが現実だ。
日本の川と湖の釣りの法制度は、実体のない漁業を中心にすえている。生業としての漁師のいない漁業協同組合が漁業権を持つこと自体がおかしい。制度と現実の乖離を指摘し、法律の抜本的な改正を求める声もある。
個人的に内水面漁協は不要と主張していた時期もあったが、今は一概にそうでもないと考える。内水面の釣り場制度についてこの20年くらい関わっている間に、ひとも社会環境も変わった。その極めつけが原発事故である。
というような意見も、この本の自分の担当章(Part Three: Native Trout and Globalization: A History of Angling, Fisheries Management, and Conservation in Japan)に書きました。北大低温科学研究所の白岩孝行さんが正確で格調高い英語に翻訳してくださいました。
シカゴ大学出版局の新刊『Backcasts: A Global History of Fly Fishing and Conservation』には、世界各国のフライフィッシャーが関わった環境保全の歴史と、リアルタイムのレポートがまとめられています。
文章の最後に、
I am willing to guide you when you come to Japan.
なんてことを書いてしまいました。自分で言っておきながら、「マジかよ。」といま後悔しています。もし間違って誰かが来ちゃったら、多摩川のオイカワでも釣らせればいいでしょう。
表紙はJ. Prosekさんの超かっこいいイラストです。上からヤマメ、サクラマス、アマゴだそうです。グローバルな本の表紙を日本のマスが飾るという、愉快なことになっています。