ジプシー・ジョー選手が亡くなったという。
ジプシー・ジョー選手がIWA-JAPAN参戦時代に、当時新宿二丁目にあったわたしの事務所でお会いした。わたしが少しだけ広報のお手伝いをしていた関係で、営業部長のOさんがごほうびで会わせてくださったのだ。
ピンポンが鳴ったのでドアをあけると、薄暗くて狭いマンションの廊下に、お茶目な笑顔のジプシー・ジョー選手が立っていた。ファイティング・ポーズだった。サービスだ。わたしは「あうあう。」とか言ったと思う。コーヒーをいれようとして、いらない、と言われてお茶を出した。
ワンルームの仕事場で、ふだん打ち合わせをしているプリント柄の合板の、いかにも安っぽい机の向こう側に、ジョー選手が座った。〝放浪の殺し屋〟が目の前にいた。からだは大きくはなかった。あの日わたしはいったい何を話したのだろう。ぜんぜん覚えていない。
別れ際に、ジョー選手は馬場とゴディの名を挙げ、「みんな死んじゃったよ。」と仰った。その表情があまりに寂しそうで、わたしは、「ジョーさん、あなたは偉大なレスラーです。」と伝えるのがやっとだった。ジョー選手はかるく手をあげてこたえてくださった。
数日後、嵐の10.1国立代々木競技場第2体育館で、背中をパイプイスでぶっ叩かれる〝ジプシー・ジョー〟の姿があった。
わたしは死ぬほど声を張り上げて応援した。