昨日の昼、小社近刊『海フライの本2』の著者から電話。「今朝横浜釣れましたよお。イナダが陸っぱりで楽勝ですよーお」と言われた。じつは今『フライの雑誌』次号第79号制作の佳境でぐちゃぐちゃなのだが、それからはイナダが気になって気になって集中できない。がんばって夜中まで作業したもののぜんぜん眠れないので、ええい、このまま横浜行っちゃえ、と決めた。
釣り雑誌の編集人という立場で、職務上知り得た情報をもとに自分が釣りに行っちゃうのは、まったく品位に欠ける行動と言わざるを得ない。しかし私の場合こういうことは年に何回もないので、たまには自分に甘くなってもいいじゃんと納得させてみた。ン億円の兵器をゴリ押しするのに比べたら可愛いもんだって。
午前5時、教えてもらった横浜某所へ着いた。道具は先月からトランクへ積みっぱなしの、道北海サケ用のタックルとフライのまんま。何とかなるだろ。来るときゃ来るよ。こんな釣りしてるとうるさがたのカブラー斉藤氏あたりからまた批判されそうだが、かまへんかまへん。
結果的には1匹も釣れずチェイスもなしのまま、明け方2時間限定の釣りは終わった。ルアーの人は数本釣っていたのでいることはいる。帰りは半分居眠り運転しながら朝のラッシュを抜けて、這々の体で自宅に着いた。すると私の行動をどこかで見ていたかのようなタイミングで、「イナダどうでしたかー」と再び著者から電話。「ぜんぜんだめだったよお」「えーほんとですかー。おっかしいなあー、両手で速引きですよお。…あ、俺いちばん大事なこと言うの忘れてました」。んがー。
何度も言うように今は佳境なのでそのまま寝ずに自宅を出て京王線に揺られ編集部に向かった。駅から編集部までの道をふらふら歩いていたら、マンホールの蓋がぐにゃりと歪んで見えたのは、我ながらちょっとこわかった。なんか俺、長生きできなさそうな感じ。でもいい釣りできなくてなにが人生か。いや今日はいい釣りしてないけどさ。