「あの竿どうしたっけかな」とふと思いついて、家探しを始めた。すると物置、玄関、押入れ、車の中から出るわ出るわ、そういえばあったあった的なフライロッドが続々と発掘された。1本のロッドケースに竿が互い違いに2本入ってたりするから始末が悪い。いちいち全部ケースを開けて確認する。
第99号にも書いたが、わたしの初めてのフライロッドは、シェークスピアのNo,1921だ。立川の中武デパート釣具売場で買った。リールとラインとセットで7980円だった。それは夢に見るほど憧れた〝本物のフライロッド〟だった。それまではスピニングで手製の毛鉤をぶん投げていた。
「フライフィッシング教書」と「ザ・フライフィッシング」、「Angling」と「月刊つり人」「フィッシング」を愛読していた。(きっといつかはフライフィッシングをやりたい)と、かわいた喉に唾を飲み込んでいた。やっと手に入れたフライロッドがうれしくて、毎晩枕元に置いて寝るような14歳だった。
あと30年たったら、自分で自分の竿も把握できていないおっさんになると知ったら、あの頃のわたしはどんな顔をするだろう。口をきいてくれるだろうか。わたしは沼へ頭から沈みこむように堕落してしまった。若い人は知らないと思うけど、犬神家の一族のように。
もちろんお目当ての竿はどこかにまぎれて見つからない。
もはや色々あきらめた。
いますごく欲しい竿が2本ある。