そこにライズがあるからさ。

たびたび自慢しているように、今の仕事場は多摩川支流の浅川の畔から50メートルの立地にある。ここに越してから一ヶ月、雨の日以外は基本的に毎日川へ行っている。ライズは必ずある。だからとりあえず毎日川へ行って辺りをうろうろする。なぜ川へ行くんだい。そこにライズがあるからさ、と自問自答しよう。

川へは釣り竿を持っていくときもあれば、持って行かないときもある。これだけ川が身近だと、釣っても釣らなくてもどちらでもよくなる。太平洋へカジキを放し飼いにしてあるようなものだからね、という台詞があったが。

といいつつ、自転車で15分ほどのぼった上流で、いいサイズのニジマスのライズに遭遇したときは、ママチャリで激走して仕事場へフライロッドを取りに帰った。そういう日に限って手ぶらなのだ。ベストまで着こんで息を切らせて戻って来たときには、ライズなんかもちろんもうどこにもなかった。油断した我が身を少しだけ呪った。

今日は朝から埼玉で行われたJCAさんのキャスティング大会の取材へ行って来た。午後遅く戻って来て、夕やけ雲が流れるのを窓から見ていたらソワソワして来た。やっぱり行くかな。いつも仕事場の隅に立てかけてある7.6フィートの二本継ぎの竹竿をつかんで、地元の上州屋さんで買った長靴を履いて、適当な毛バリをポケットに突っ込んで、川までぷらぷら歩いて行った。

もし11月20日発行予定の次の『フライの雑誌』が遅れたとしたら、それはぼくがこんな毎日を送っているせいです。今からあやまっておきます。ごめんなさい。遅れても必ず出ますのでご心配なく。今夜はけっこうな雨降りなので、川は増水するでしょう。明日は仕事ができます。

最新単行本:釣りをとおした環境教育『宇奈月小学校フライ教室日記 先生、釣りに行きませんか。』発売中