そして川は流れつづける

零細版元は毎日が女工哀史だ。基本的に休みなくネズミ車を回し続けていないと本や雑誌が出ないか、遅れる。今年はネズミ年なのでがんばってぐるぐるしたい。
季刊『フライの雑誌』は次の80号が年間定期購読の更新時期にあたる。じつは毎年この時期、編集部は読者の皆様からの定期購読の申込みを、郵便ポストの前とメールサーバの前で毎日、戦々兢々としてお待ち申し上げている。今年はおかげさまでなぜか、昨年ベースよりもわずかながら申込み状況が芳しい。ひじょうにありがたい。ただ、芳しい理由がなんなのか、自分たちで全然分かっていないところが、まさにフライの雑誌社のネズミ車っぷりを象徴している。
今日の日曜日は珍しく半日予定が空いた。どこへ行こうか迷った後に、府中の多摩川へ出かけた。適当な練り餌をつけて、仕掛けを投げ、水面にもじもじしている棒ウキを眺めていると、浮き世を忘れる心地だ。
世間はあれこれとかまびすしいが、1バレル100ドルを超えても超えなくても、川は流れつづけている。そこに魚がいれば釣り師は幸せだ。こんなことを言っていると、創刊21年めの今年も(そしておそらくこれからも)、フライの雑誌社はずっと女工哀史のような気がする。でもわりと幸せだからそれでいいと思う。