2015年11月のニュースから。
米食品医薬品局(FDA)は19日、遺伝子操作により、通常より2倍ほど速く育つようにした遺伝子組み換えサーモンの販売を認める方針を発表した。植物以外での遺伝子組み換え食品の承認は初めて。業者にとって養殖期間が短くなる利点があるが、一部で「フランケン・フィッシュ」と呼ばれるなど安全性への不安や、サーモン市場の競争激化などを心配する声も出ている。
FDAによると、このサーモンは、マサチューセッツ州のバイオテクノロジー企業が開発。別の魚の成長ホルモンの遺伝子を組み込むなどして、出荷まで通常3年ほどかかる養殖期間を半分ほどに短縮できるという。通常種との交配を避けるため、カナダとパナマにある専用施設2カ所でのみ養殖が認められた。
朝日は「別の魚の成長ホルモンの遺伝子を組み込む」と、さらっと書いているが、CNNは、〝キングサーモンの成長遺伝子と「ゲンゲ」というウナギに似た魚の遺伝物質を組み合わせた遺伝子を、タイセイヨウサケの卵に注入して誕生させた〟とより具体的に書いている(CNN.co.jp)。
いったいそれは、サケなのか、ゲンゲなのか。いろいろと妄想をとめられない。人の手でいじくられたややこしいサーモン(?)を釣りたくないのはたしかだ。食べたくもないかな、できれば。
養殖魚が自然界に流出して、野生魚と交雑し、問題になっている事例はいくらでもある。まして遺伝子操作された魚が自然界に出たらどうなるかは誰も知らない。そこでバイオハザードを連想するのはわたしみたいな科学音痴ばかりではないだろう。
環境省や、生物多様性をカルト的に叫ぶ人々は、影響力の大きい巨大な敵(たとえば原発とか、アンブレラ社みたいな企業とか)は見ないで、外来種のように物言えない御しやすい相手に対してだけ、正義の味方風に、強面に振る舞う。
ご都合主義とか、おためごかしとか、卑怯者という言葉がある。
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cf. 「遺伝子組み換え」と「染色体操作」
●「魚類における発生工学の統合と水産学における方向性」
●「信州サーモンについてのQ&A」
●「バイオテクノロジーによる絹姫サーモンの生産」(愛知県水産試験場)
当所が昭和63年から開発に着手し、平成6年にニジアマが、平成9年にニジイワが水産庁の特性評価の確認が得られ養殖が可能になりました。愛知県特産のホウライマス(斑紋のないニジマス)を雌親とするニジアマ・ニジイワは、愛知県知事により「絹姫サ-モン」と名付けられました。現在は絹姫サーモンの安定生産に関する研究を行っています。
なお、絹姫サーモンを生産する時に行う三倍体にする操作は、染色体レベルであり、遺伝子組み換え体と違って遺伝子そのものを改変しないため、食品としての安全性に問題はありません。
●「染色体操作とは」(近大水産生物学研究室)
遺伝子をゲノム単位で増やしたり、減らしたり、違うものを組み合わせたりして、有用な特性を引き出す育種法です。もともとその種がもっている遺伝子をそのまま使います。
●「水産育種研究戦略」(水産総合研究センター)