どちらといっしょに釣りへ行きたいか

今どきまったくはやんない作家だとは思うが、ある会話がきっかけで、鎌田慧氏の葛西善蔵論を10数年ぶりに読み返したらこれが面白い。葛西善蔵にはぜひフライフィッシングをやってほしかった。
子を連れて困窮の極みにあった彼が、食料調達のためにフライロッドを手にして川辺に立ち、着流しでジッとライズを見つめているところなんか想像したらドキドキする。どんな釣りをするのだろうか。おそらくはもの凄く下手くそで、イライラのあまり大切なフライロッドをその場でバキッと折っちゃって、大後悔とかしてくれそう。
一方、酔っぱらった葛西善蔵に「そんな小説書いて君は恥ずかしくないのか」と批判されて追いかけ回されたらしい石坂洋次郎がフライフィッシングをやったら、たぶん器用にこなしたろう。ルースニングとかやっちゃいそう。釣った魚は「大きくなって帰っておいで」とやさしくリリースするんだろう。
葛西善蔵と青い山脈と、どちらの作家といっしょに釣りへ行きたいかと言われたらそりゃもちろん決まってる。