小社の新刊単行本の進捗について、『フライの雑誌』77号の編集後記でご案内した。予定よりだいぶ遅れており、いまだ発売日をお知らせできる状態にない。
じつはこの数か月ほど、その本の著者はかるく失踪してくれていたのだった。自分の単行本を出すという責任感と書き下ろしのプレッシャーと闘っての前向きな失踪だとは分かっていたので、編集部としてはぐっとこらえて著者からの連絡を待ったわけだが、こんな「大人な対応」をできる版元は出版界広しといえど小社くらいではないか。
ここらへんの事情というかてんまつは、表現という病に冒された人間の内面的な葛藤と、それに翻弄される編集者のギリギリの対応として、記録しておく価値がありそうである。単行本の出版時に『フライの雑誌』誌上で紹介したい。著者とは10年以上のつきあいになるが、いい年こいた社会人としての屈託はともかく、釣り人としてのスタンスはまったくぶれなかった。
その男の名はカブラー斉藤という。