ダムをやめれば、サクラ咲く。

新刊『桜鱒の棲む川 ─サクラマスよ、故郷の川をのぼれ!』(水口憲哉著/フライの雑誌社)の帯には、こんな文言が印刷されている。

●ダムをやめれば、サクラ咲く。 ●ダムをやめ、川を川として活かす。乱獲はしない。何もしなければサクラマスは増える。 ●サクラマスの生活史は人工ふ化放流に向いていないのに、サケに見習えとばかりにとばっちりを受けた。 ●作りたい側はみんな最後に「穴あきダムにします」と言う。しかし実際は穴あきダムは屁にもならないものだ。 ●ダムを作るのにも止めるのにも仕込まれたサクラが入っていて、これでは〝サクラ革命〟ではないか。(本文より)

挑発的と言えば挑発的なフレーズだが、これらは本書内で展開されている著者の主張そのものでもある。水口氏の手によるベストセラー『魔魚狩り ─ブラックバスはなぜ殺されるのか』の帯にはこうあった。●悪玉は、お前にしよう。ブラックバスは濡れ衣だ!

ブラックバスを特定外来生物に指定する騒ぎの中では、市民の側に立っている素振りを見せながら、じつは権力になびき、このときとばかりに名を挙げて研究費の確保に走り、大勢の尻馬に乗る研究者の姿が目についた。自身の視点にもとづいて事実とは何かを議論しようとする研究者は、ひじょうに少なかった。そのまさに希少種な、ホネのある研究者の筆頭が水口憲哉氏であった。

水口氏の新刊『桜鱒の棲む川 ─サクラマスよ、故郷の川をのぼれ!』では、美しく不思議な魚サクラマスの謎を解き、その生息環境を奪う無駄なダム事業への鋭い検証と批判が展開されている。そしてなおかつ、これが大事なことだが、未来へ向けての前向きな提案がなされている。

発売から一週間、小社編集部へはそろそろ反響が届き始めている。この本は、サクラマスを社会的に深く掘り下げた日本で初めての単行本でもあり、本書への反響も絶賛一辺倒ではない気配だ。賛否両論、談論風発。大歓迎である。

『桜鱒の棲む川 ─サクラマスよ、故郷の川をのぼれ!』が今後、サクラマスを語る際に押さえておかなければならない一冊となるのは間違いない。

釣りビジョンさんの携帯サイトのコラムにこんな文章を書いた。内容はリアルタイムの現状報告で、新刊のプロモーションになってほしいと思えばこそである。

ただ、有料の携帯サイトにこんな自慢ともマニフェストともつかぬ文章を載せられても、どれだけの方が喜んでくださるかどうかは、言うまでもなく微妙だ。とりあえず謝ろう。ごめんなさい。

新刊『桜鱒の棲む川 ─サクラマスよ、故郷の川をのぼれ!』