ニジマスは1887年(明治20年)に米国より輸入され、中禅寺湖、猪苗代湖にはじめて移植放流されました。以来120年、数多の水産業従事者が、国策のもと、日本の内水面でニジマスを繁殖させることを大命題として研鑽を重ねてきました(『フライの雑誌』第47号/日本釣り場論24・谷崎正生氏インタビュー/参照)。現在ニジマスの国内総生産は一万トンを超え、法律にもとづく漁業権のもとで全国の内水面に種苗放流され、食料としてはもちろん、国民の健全なレクリエーションのために欠かせない存在となっているのは周知の通りです。
そのニジマスならびにブラウントラウト、ブルックトラウトが、特定外来生物二次指定以降の、候補のやり玉に上がっています。国策で移入し殖やさせ一転今度はすべて殺せという不条理を後押しするのは、事情をよく分かっていないマスコミでさえ、さすがに勝ち目がないと思うのか、オオクチバスのときのようなマスヒステリーは煽られていません。
日本のサケ・マス増殖事業は世界的にも批判が多く、生物多様性保全の概念に反します。オオクチバス駆除の急先鋒であり、国庫からの補助事業を多く受託している全内漁連の機関誌には、「自然を大切に」のコピーと共に、わざわざカワマスと和名に言い換えたブルックトラウトの画が描かれています。自分たちの臭いものにはふたをしたままの政治家や役人、既得権益者の白々しい空言とご都合主義を押しつけられるのはもううんざりです。