フライの雑誌社が『淡水魚の放射能』を出版する理由。ニジマス出荷250分の1でも東電「原発事故とは関係ない」

 宮城県の15の個人・法人が6月下旬、東京電力に行った福島第1原発事故による営業損害などの集団賠償請求で、東電は計2億1635万円の請求に対し、現時点で3万円しか支払わない方針を示していることが28日分かった。…

 賠償を拒否された宮城県富谷町の淡水魚養殖業者は震災後、東京の築地市場から「原発事故で宮城の淡水魚の注文がなく、出荷しなくていい」と言われた。主力のニジマスの出荷額は震災前、年間約250万円だったが震災後は1万円に落ち込んだ。

 こうした経緯を記した文書も請求時に提出したが、東電側は「事故と損害の因果関係は確認できない」と回答。養殖施設が蔵王町にあることも記載したが、東電側は「(富谷町に近い)鳴瀬川では淡水魚が出荷制限されていない」と拒否理由を挙げ、蔵王町の河川には触れなかった。(河北新報 2012年08月29日

東電はもちろん無法だ。と同時に、東電に開き直りを許している上記のような背景を考えると、〝規制値以下だから問題ない〟と国の決めた方針に乗じるマスコミの復興支援も大いに疑問だ。風評被害の言葉が問題解決を遅らせ、被害を拡大させている。

このままだと過去の公害や薬害で繰り返されてきたそのままに、弱い者が権力の力学に押し切られる。やはり原発と自分たちの社会の未来との関係を見つめ直し、問い直すことが必要だ。面倒で、つらくて、体力のいる作業だけれど、原発を受認してきた同時代人として私は向き合おうと思う。

なにも考えずに川や湖や海で遊ぶのが大好きな脳天気な釣り師の自分には、これはなかなかタフな選択なのだが、それはそれとして、自分が楽しんできた釣りの喜びを何とかして次の世代へも残したいという気持ちが強い。

小さいとはいえ出版社をやっている自分に今できることは、自分の会社にしか出せない本を世に出すことだと信じます。

新刊『淡水魚の放射能 川と湖の魚たちにいま何が起きているのか』(水口憲哉=著)は9月3日から発送開始します。本書は一般書店さんの店頭には並びません。ご注文のみの扱いとなります。書店カウンター、各ネット書店、小社ウェブサイトからご注文ください。

書下ろし緊急出版。『淡水魚の放射能 川と湖の魚たちにいま何が起きているのか』(水口憲哉=著)
『淡水魚の放射能』B5チラシ