ハッスルと牛乳

今年の年末はTXで「ハッスル」中継をやる。企画会社ハッスルエンターテインメントの社長は山口日昇氏で、この人は『紙のプロレス』誌の創刊編集長だった。私はA5版時代の『紙のプロレス』のファンで、創刊5号くらい(だったかな)で知ったのが悔しくて、わざわざ豊島区の編集部まで押し掛けてバックナンバーを買いそろえた。談志とか普通に出ていて、すごい雑誌だった。今をときめく吉田豪氏も『紙のプロレス』から出てきた。
インタビュー記事で相手の発言の「これは」と思うフレーズの級数を勝手に上げかつ太文字にし、必要以上に強調する編集技術は、『紙のプロレス』が最初に編み出したのではないかと思う。アントニオ猪木の「どうってことねえよ」という名フレーズがその典型例。
『紙のプロレス』別冊の『猪木とは何か?』で、当時のかなりやばい系のスキャンダルを「どうってことねえよ」、「どうってことねえよ」と猪木が太文字で笑い飛ばすたび、やっぱり猪木はすごいなあと感動したことを思い出す。ちなみにこの太文字強調を、同じ業界にもかかわらず後追いで真似したのが『週刊プロレス』誌。しかも全然上手ではないと来るから、恥ずかしいったらなかった。
プロレスファンにとって自分の好きなレスラーのキャラクターを作りストーリーを自在に操る快感は、ボタンを押すと思い通りの技を出してくれる「ファミコンプロレス」にも通じて、自分が「神」になった気分を味わえる楽しくやりがいある仕事だろう。『紙のプロレス』を創り、側近の文字通りのダブルクロスを受けて裸一貫となり、そこから立ち上がって『紙のプロレスRADICAL』で復活し、雑誌業界をあっさり辞めた後に、ハッスルをここまで盛り上げてきた山口日昇氏の年末の大仕事が今から楽しみだ。

というわけで昨夜遅く(ていうか今朝)、駅前のローソンで牛乳を買って帰ろうとしたら、レジのおじさんが「ストローつけますか」。1リッターパックなんですけど。いっそその場で飲み干してやろうかと思ったが疲れていたので「いいえいりません」。