パイロットはマシュマロ。

琵琶湖の帰り道に信州の渓流へ寄った。どこへ行こうか、事前情報なし。頼るのは、自分のこれまでの釣り人生のなかで培ってきた、野生のカンのみだ。わたしのカンは、100回に一回くらいはあたることもある。これは自慢やで。(関西帰りなんですんまへん)

他人さまに教えてもらったポイントで釣っても、それは他人さまが釣ったのと同じ。とは言わない。でも、自分がいただく食事は、学校や刑務所で決められた餌を与えられるより、分厚いメニューから自分で選ぶほうが楽しいに決まっている。と、これもあまり穏当なたとえではない。だって世の中には、昨日と明日の釣りの情報提供を生業としている方がいらっしゃる。むしろあからさまに不適切な表現だ。ま、フライの雑誌社の本はポイント紹介とか載せないからブーメランは飛んでこないちゅうことで、ええんちゃいまっか。

山田風太郎先生は「あと千回の晩飯」と書いた。わたしが自由に渓流釣りをできるのは、あと千日もぜったいない。今日は、知らない川へ行きたい気分だ。サービスエリアのテーブルでぼろぼろの「中部マップル」をひろげて、よさそうな川を探した。この季節にぴったりの、半日だけでもそこそこの釣りを楽しめそうな、お魚のたくさんいる川は、どこにあるだろう。あるのかなあ?

おっさんフライフィッシャーはこういう渓相が大好き。
おっさんフライフィッシャーはこういう渓相が大好き。ウエーダー越しにたちのぼるはじめての川の匂い。はじめての異性の肌の匂いのような。ちゃうちゃう。ほんまおっさんやでもう。さて、最初にどんなフライを結ぼうか。わたしのパイロットフライは、大昔はおっさん滂沱のなみだのブラウン・パラシュートだった。そのあと、みんな大好きエルクヘアカディスの時代がかなり長かった。いまはマシュマロスタイルのパラ。天気がいい今日は黒いやつから始めた。
きっちり3キャストめで出た。いるじゃーん。
きっちり3キャストめで出た。いるじゃーん。
東京の人間にとってアマゴはちょっととくべつ。そのとくべつな魚がばんばんでる。
東京の人間にとってアマゴはちょっととくべつ。そのとくべつな魚がばんばんでる。
アントにはゆっくり、ほんとにゆっくり出る。試しにストレートボディに変えてみたら、猪木の張り手みたいにビシッ、バシッと出て、フッキング率もおちる。おもしろいなあ。ボディの真ん中のとこが2ミリくらい細くなってるかどうかの違いだけなのに。
アントにはゆっくり、ほんとにゆっくり出る。試しにストレートボディに変えてみたら、猪木の張り手みたいにビシッ、バシッと出て、フッキング率もおちる。おもしろいなあ。ボディの真ん中のとこが2ミリくらい細くなってるかどうかの違いだけなのに。
空を飛ぶ鳥のように、自由に釣ろう。今日の川はさようなら。また会う日まで。
空を飛ぶ鳥のように、自由に釣ろう。今日の川はさようなら。また会う日まで。
『フライの雑誌』第98号 シマザキ・ワールド13 島崎憲司郎 マシュマロブーム、北岡竿、この夏の収穫、ココロの舵 SHIMAZAKI WORLD13 text&photo by Kenshiro Shimazaki
『フライの雑誌』第98号
シマザキ・ワールド13 島崎憲司郎
マシュマロブーム、北岡竿、この夏の収穫、ココロの舵
SHIMAZAKI WORLD13
text&photo by Kenshiro Shimazaki
フライの雑誌 105(2015夏号): 特集 日本の渓流の「スタンダード・フライロッド」を考える。/隣人のフライボックス/60年目の養沢毛鉤専用釣り場
フライの雑誌 105(2015夏号): 特集 日本の渓流の「スタンダード・フライロッド」を考える。/隣人のフライボックス/60年目の養沢毛鉤専用釣り場
43人に聞いた渓流・本流用ベスト・フライパターン|フライの雑誌100号
43人に聞いた渓流・本流用ベスト・フライパターン。全国のフライフィッシャーへアンケートを実施。渓流・本流で実際に信頼されているフライパターンを100本以上紹介します。釣り場でどんな風に使われているかの釣り人の生々しい声を大量に集めました。現代のホンネのフライパターンブックの決定版|フライの雑誌100号