『フライの雑誌』第100号記念号の特集「フラット・グリップ・レボリューション 島崎憲司郎」には、大きな反響がありました。編集部には「フラット化を自分もやってみた」という読者からの声がたくさん届いています。
掲載後、編集部の個人的な知り合いも数人やってきては、「ちょっとフラット・グリップ触らせてみ」ということで、私物のフラット・グリップロッドを近所のあさ川でなにしてみるなど、あれこれ愉しんでいます。フラット・グリップ化することでそれまでのロッドの使い勝手が「こんなに変わるんだねえ」と、驚いている感じです。
第100号記念号でも解説されているように、すべてのロッドがフラット・グリップに適しているわけではありません。しなくちゃいけないものではもちろんありませんし、したら絶対よくなるものでもありません。そこは遊びですから。
手持ちのフライロッドの、フラット・グリップ化に興味はあっても、もう一歩実行へ踏み出せないという方もいらっしゃいます。たしかに一本しかないお気に入りのフライロッドをなにして、もし失敗しちゃったらどうしよう、という気持ちはわかります。
わたしもハヤ釣り用のお気に入りの竹竿をジョリジョリする(島崎さん御大にジョリジョリしてもらったんですが)のには、けっこうな勇気がいりました。御大にやってもらうのであっても、かなりの清水でした。誌面にも書いた通り、結果的にはやって大正解だったわけですが。
とまれ、フライロッドのグリップは消耗品です。ご存じのように、コルクは使っているうちに摩耗してきます。使い手のデザインの好みも変化します。気にいらないなと思ったら、どんどんグリップなど交換してしまえばよいのです。自分でやっても難しいことではありませんし、そういう加工を得意として、安価(数千円以内)で請け負ってくれる釣具屋さんもたくさんあります。
フラット・グリップ化して、もし「やっちゃった。」ということになっても、ロッドブランクへの負担ゼロで、かんたんにグリップごと交換することができます。むしろ気分が変わってきもちいいんじゃないでしょうか。せっかくフライフィッシングをやっているんだから、新しいことを色々試してみれば世界がひろがるかもしれません。
フラット化をやってみて大正解だった!という事例を紹介します。
もうこのギアチェンジとハンドルさばきを知ったなら、もとのグリップには戻れません。力を入れるとフラットな面からロッドに伝達されるので、素直に抜けていく感覚が良くわかります。またティップの方向性も、フラットなだけにタイトに攻められます。小さなティルト(傾き)で思ったところへ投げれるわけです。好き嫌いはあるにせよ、フラットグリップの登場でグリップの形状は長い呪縛から解き放たれたのです。今まで疑うことすらなかったグリップの形状達はOne of themとなりました。まさに「魔術」からの開放と言えます。特に鞭系のロッドにはフラット・チューニングが強烈に効きます。
この方は『バンブーロッド教書』訳著者の永野竜樹さん。興奮している様が伝わってきます。たしかに、米国中西部のオラオラ系のフライロッドのグリップは、たいていゴツくて太くて長くてご立派すぎて、わびさび系の東洋人には手に余る感じです。フラット・グリップ化するには格好の素材でしょう。お試しを。
オリジネーターの島崎憲司郎さんによるフラット・グリップの最新バージョンは、『フライの雑誌』次号第101号記念号で紹介します。