今さら「不都合な真実」を観たあとで新宿

先週末、四谷区民ホールで開かれた「第16回 地球環境映像祭」に出かけた。スペシャルプログラムとして用意されていた、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のノーベル平和賞受賞記念講演と、同じくノーベル平和賞を受賞したアル・ゴア合衆国元副大統領の映画「不都合な真実」が目的だった。

ノーベル平和賞ほど世間的な名声と実態がかけ離れている賞も珍しい。佐藤栄作元首相も受賞しているほどだ。そもそも佐藤栄作とアウン・サン・スー・チーさんと国連平和維持軍とネルソン・マンデラと金大中とが横並びするのがすごい。その点でかたくなに受賞を拒んだマハトマ・ガンディーはさすがである。高校生だった浜田省吾が1968年の佐藤栄作訪米阻止闘争に参加したのもさすがである。

浜田省吾はともかく、「不都合な真実」を観た感想について。映画「不都合な真実」は、環境保護活動に粉骨砕身するゴアさんを描くドキュメンタリーである。大風呂敷を広げてことさらに地球環境問題を煽る行為は、カタストロフで脅す終末論者とさして変わらないと思っているので、基本的にはまったく好きではない。さて、とはいえ、作中で、高度なパワポを駆使してオーバーな身振り手振りと共に、ひな壇に並んだ支持者を前にして地球環境保護を熱く語るゴアさんの姿には、いかにもアメリカっぽい強烈な説得力があった。息子の交通事故体験を持ち出して、その時に自分の人生観が変わった、環境保護活動を広めることが自分の人生の目的なのだ、とつなげる強引な浪花節も、つい勢いで応援したくなるほどだ。つまり「不都合な真実」はよくできたゴアさんのプロモーションビデオだということだ(こういう風に感じた人はけっこういるみたい)。

映画が終わって四谷の街に出た。ホールの暖房がきつすぎて顔がほてっていたので新宿駅まで歩いていくことにした。一丁目、二丁目、三丁目と歩くにつれて人がどんどん増えていく。ここ数年で一気に渋谷化した東口界隈を横目で眺めながらまだ昭和の趣が残る西口地下道へ向かう。襟足の汚れたホスト崩れや、ゴスロリ衣装の女子、ライオンヘアの浮浪者たち(この言葉も最近聞かない。横文字にすればいいってものじゃない)がうろうろしている。ネオンの空に映る巨大なビル群と、ロータリーにあふれる膨大な電力、渦を巻く大騒音。プラカードを首からぶら下げた「私の志集」が、排気ガスを浴びながら20年前と同じように柱の影に立っている。ゴアさんは運転手付きの車の後部座席でマックを操作しながら北極や南極の危機を語っていた。でもこんな新宿も地球だし、こんな地球も悪くないじゃんと思った。

明日は今年2回目の春の渓流釣りへ行けるかも。