『フライの雑誌』第87号で、岩手県気仙川でのサクラマス産卵観察会の様子を紹介した。寄稿してくださったのは、めぐみ豊かな気仙川と広田湾を守る地域住民の会の山下裕一さん。
以下に第87号掲載のその記事の全文を、pdfファイルで公開する。また観察会での記録映像もあわせて紹介する。サクラマスの親魚がペアリングしている貴重な映像をご覧いただきたい。気仙川で生まれて海へ下り、長旅を終え子孫を残すためにまた気仙川に帰ってきたその姿は、神々しいばかりだ。
昨年よりだいぶ遅れたが、今年も気仙川のサクラマスの産卵の季節がやって来た。山下さんから先週いただいたお電話によると、サクラマスたちは続々と姿を見せ始めているということだ。
気仙川の大支流である大股川にはいま、地元の多くの反対を無視して、巨大な津付(つづき)ダムが計画されている。今年5月の新刊単行本『桜鱒の棲む川 ─サクラマスよ、故郷の川をのぼれ!』(水口憲哉著)は、津付ダムが完成すれば大股川のサクラマスは絶滅する、と明言している。
氷河時代から数十万年を生き抜いてきたこの美しいサクラマスを、私たち人間はどうして次世代へと残せないのだろうか。サクラマスの生きられない星には人も生きられないはずなのに。