今年も秩父でイワナ、ヤマメの人工産卵場を造成した。飛べ、龍勢ロケット。

今年も秩父でイワナ、ヤマメの人工産卵場を造成した。

渓流魚の人工産卵場の技術を日本で初めて確立したのは、独法水産総合研究センターの中村智幸氏だ。『フライの雑誌』へ連載した記事を、単行本『イワナをもっと増やしたい!』(2008年)にまとめた。

人呼んで〝人間重機〟、秩父の内田洋さんは『フライの雑誌』の記事を見て、当時のトラウト・フォーラムへ参加した。それから内田さんは今年で12シーズン汗水ながして、産卵場造成に関する独自の色々なアイデアを現場で試行錯誤してきた。内田さんのアイデアは今では中村さんが「秩父方式」として講演で紹介している。素敵なフィードバックだ。

『イワナをもっと増やしたい!』で世の中に出て以来、渓流魚の増殖方法として人工産卵場の造成はすっかり定着した。しかしいまだに、「人工産卵床をみんなでつくった」とかいう記事を雑誌や企業広告で散見する。それは大きな間違いだ。何が違うのか、理由は『イワナをもっと増やしたい!』を読んでください。産卵床を作れたら苦労はしない。

えらそうにしてたって人間のやることなんてしょせんそんなレベルだ。

って去年も書いた気がします。

10月11日、今年も秩父でウロウロしてきた。内田さんに誘われて最初に秩父へ行ったのは、記録を見ると2005年の秋だった。ふと気がつくと10年やっている。

自然の産卵床を内田さんが見つけた。渕尻の丸く白くなっている部分が産卵床。ざっと数えただけで十カ所近くある。「あれはヤマメだね。ちょっと小さいな。」と内田さん。
自然の産卵床を内田さんが見つけた。渕尻のカケアガリで、丸く白くなっている部分が産卵床。ざっと数えただけで十カ所近くある。「あれはヤマメだね。ちょっと小さいな。」と内田さん。

今年は荒川支流のそのまた支沢に作ることにした。川の状況、魚の数など、その年の状況によって産卵場を造る場所を変えている。もちろんそこらへんの判断は、地元の内田さんの不断の観察によるものだ。
今年は荒川支流のそのまた支沢に作ることにした。川の状況、魚の数など、その年によって産卵場を造る場所を変えている。もちろんそこらへんの判断は、地元の内田さんの不断の観察によるものだ。

最初に大きな岩をどかす。今年は近所の子ども二人が手伝ってくれた。若い衆にがんばってもらおう。
最初に大きな岩をどかす。近所の子ども二人が参加した。若い衆にがんばってもらおう。

大きな岩をどかしたら、30㎝くらい川床を掘る。若い衆Aにがんばってもらおう。
大きな岩をどかしたら、30㎝くらい川床を掘る。若い衆にがんばってもらおう。この子らは最初に連れてきた2、3年前ははただわーわー言ってそこらへんを走り回ってるだけだったが、年々使えるようになってきた。

農作業用の手袋に腕ガードを組み合わせた。若い衆Bが自分で工夫して準備してきた。えらいぞ。
農作業用の手袋に腕ガードを組み合わせた。若い衆Bが自分で工夫して準備してきた。えらいぞ。

産卵場所に敷く小砂利を集める。これがいちばん大変なのだが、若い衆にがんばってもらった。
産卵場所に敷く小砂利を集める。これがいちばん大変なのだが、若い衆にがんばってもらった。

元気があり余っている若い衆は、ちょっと目を離したすきに、妙な分流を作りやがった(右奥)。これではせっかくの産卵場への水流が減ってしまう。「なんでこんなの作るんだ。」「だってこういうの作るの楽しいんだよ。」「楽しいのは分かるがお前らなー。」と言って、元に戻させた。
元気があり余っている若い衆は、ちょっと目を離したすきに、妙な分流を作りやがった(右奥)。これではせっかくの産卵場への水流が減ってしまう。「なんでこんなの作るんだ。」「だってこういうの作るの楽しいんだよ。」「楽しいのは分かるがお前らなー。」と言って、元に戻させた。

とりあえず二カ所作って、今日のしごとはおわり。「ちゃんと流れてるかどうか、明日また見に来ますからー。」と内田さんが言っていた。人工産卵場の作りっぱなしはただの自己満足にすぎないのは分かっているが、なかなかアフターケアまではできない。内田さんに感謝。
とりあえず二カ所作って、今日のしごとはおわり。「ちゃんと流れてるかどうか、明日また見に来ますからー。」と内田さんが言っていた。人工産卵場の作りっぱなしはただの自己満足にすぎないのは分かっているが、なかなかアフターケアまではできない。内田さんに感謝。

しごとがおわったあとは、秩父のうまいものめぐり。じつはこっちが楽しみだったりする。こちらは「ふるさと両神」の食べ放題こんにゃく田楽。いやー、すばらしかった。
しごとがおわったあとは、秩父のうまいものめぐり。じつはこっちが楽しみだったりする。こちらは「ふるさと両神」の食べ放題こんにゃく田楽。いやー、すばらしかった。

秩父市吉田にある椋(むく)神社の龍勢まつりを初めて見た。地元住民お手製の巨大ロケットへご神木(丸太)をくくりつけ、空へ向けて飛ばしっこする有名な奇祭。うまくいくと100メートルくらい打ち上がる。ロケットの数は年々増えて今年は30発。数年前までは発射台のやぐらもなく、ゆっくり降下させるためのパラシュートもなかった。だから打ち上げたご神木がどこへ飛んでいくか分からなかった。民家の屋根を突き破って落ちたこともあったという。でもご神木なので屋根を突き破られた家のお年寄りはありがたがって喜んだとか。その頃は、打ち上げ失敗したロケットが、観客席へ真横に突っ込んでくることも普通で、もちろんものすごく危険なのだが、みんなキャーキャー言って喜んでたらしい。やっぱり奇祭だ。
秩父市吉田にある椋(むく)神社の龍勢まつりを見た。地元住民お手製の巨大ロケットへご神木(丸太)をくくりつけ、空へ向けてダダーンと飛ばしっこする有名な奇祭。うまくいくと500メートルくらい打ち上がる。ほんの数年前までは発射台のやぐらがなく、しかも丸太をゆっくり降下させるためのパラシュートもつけてなかった。だから打ち上げた丸太がどこへ飛んでいくか、どこに落ちるか、誰も分からなかった。まさに神のみぞ知る。飛びすぎた丸太が民家の屋根を突き破って落ちたこともあった。でもご神木なので、屋根を突き破られた家のお年寄りは「神様に選ばれた。」とありがたがって丸太を拝んだらしい。落ちてきた丸太が突き刺さりぐしゃぐしゃになった新車のプリウスを内田さんは見ている(すごい絵だったろう)。また、打ち上げを失敗したロケットが観客席へ水平に突っ込んでくることも普通で、それはもちろんものすごく危険なのだが、みんなでキャーキャー言って嬉しそうに逃げている映像がYouTubeにある。やっぱり奇祭だ。秩父すげえ。

秩父漁協が運営している荒川本流の「冬季にじますキャッチ&リリース釣場」へ。看板の文言が玄人っぽい。今シーズン来よう。
秩父漁協が運営している荒川本流の「冬季にじますキャッチ&リリース釣場」へ。看板の文言が玄人っぽい。今シーズン来よう。

しめはいつもの喫茶店で。今回はよくがんばった近所の子ども二人には、「一人一品」ルールで、それぞれパフェとケーキを与えた。お前ら2、3年前はまったく使えなかったけど、ずいぶん大きくなった。若い世代へ引き継がなければ。
しめはいつもの喫茶店で。今回はよくがんばった近所の子ども二人には、「一人一品」ルールで、それぞれパフェとケーキを与えた。お前ら2、3年前はまったく使えなかったけど、ずいぶん大きくなった。若い世代へ引き継ごう。

イワナをもっと増やしたい!「幻の魚」を守り、育て、利用する新しい方法|中村智幸
イワナをもっと増やしたい!「幻の魚」を守り、育て、利用する新しい方法|中村智幸
フライの雑誌 105(2015夏号): 特集 日本の渓流の「スタンダード・フライロッド」を考える。/隣人のフライボックス/60年目の養沢毛鉤専用釣り場
フライの雑誌 105(2015夏号): 特集 日本の渓流の「スタンダード・フライロッド」を考える。/隣人のフライボックス/60年目の養沢毛鉤専用釣り場
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第99号 特集はじめてのフライロッド!
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バンブーロッド教書
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