北海道のイトウを考える(その3)

昨日3月7日、北海道環境生活部自然環境課による「イトウ保護についての関係団体との意見交換会」(以下、意見交換会)が開催された。道庁が指定した参加者は、(1)イトウ保護連絡協議会(猿払イトウの会、朱鞠内湖淡水漁業協同組合、ソラプチ・イトウの会、別寒辺牛川流域イトウ保護連絡協議会、斜里川を考える会、遊楽部川の自然を守る会、オビラメの会、道東のイトウを守る会、釧路自然保護協会、十勝のイトウを守る会、事務局) (2)北海道釣り団体(北海道スポーツフィッシング協会 ほか) (3)学識経験者(魚類検討部会委員)。一般市民、ジャーナリストの参加は認められなかった。

結論として、今春に北海道が予定していた「4月〜5月の産卵期におけるイトウ釣り自粛のお願い」の実施は、延期されることになった。当日の会場では、釣り人団体に加えてイトウ保護団体からも、実施に疑問の声が上がったようだ。

フライの雑誌社編集部では、意見交換会に参加したオビラメの会事務局で、「なぜイノシシは増え、コウノトリは減ったのか」(平凡社新書)などの著書がある平田剛士氏に、電話で取材した。平田氏によると、「道内の各地方ではすでに、地域特性に即したイトウ釣りの自主申し合わせが機能している。北海道環境局もそのことを承知していたものの、レッドデータブック記載のイトウを保護する名目での自粛案に、今回ほどの反響が起きるとは思っておらず、軽い気持ちで提示していたのではないか」とのこと。

既報のとおり、これまで北海道環境部局は、充分な情報公開をしていなかった。そもそも全道的に一括でイトウの産卵期を「4月〜5月」としていることには、専門家の中に異論がある。関係者筋からは、一方的な「お願い」は実態に即しておらず、かえって逆効果ではないか、と指摘されていた。今回の意見交換会も意見を市民から聞いたというアリバイ作りなのではと批判されるに及んで、北海道環境部局はこれ以上強引な手法をとりきれなくなった、というところか。

夢のある大魚、イトウがいつまでも生息できる環境を守れるかどうかは、世界的に注目されている。今回の一件では問題はあるにせよ「イトウを守りたいという意思を、初めて北海道環境部局が示した」(平田氏)のはたしかだ。当然のことだが、イトウを守り育てるためには、産卵床となる支流や湿原環境の維持などが、もっとも重要な要素である。しかしながら、イトウの生息環境を脅かす無用なダムや堰堤、道路開発などについて、北海道環境部局はこれまで明確に反対できていない。

北海道環境部局は、イトウを守り育てるために、御しやすい相手への小手先の施策でお茶を濁すのではなく、もっと本質的で大きな問題に取り組むべき時ではないか。主旨を明らかにして広く横の連携を求めれば、多くの人が協力するに違いない。(フライの雑誌社編集部/堀内正徳)