単行本『人生の「秋」の生き方』(PHP研究所)に島崎憲司郎氏登場

月刊『Voice』誌の2007年2月、3月号(PHP研究所)に、「人生後半、さらには人生最後の幸せとは何か」をテーマに、各界の著名人がエッセイを競作した特別企画が掲載された。寄稿者は森毅、猪瀬直樹、古井由吉、養老孟司から呉智英、日野原重明、池部良、小池百合子など総勢49名、よくもこれだけの人を集めたと驚く幅広いラインナップが注目された。このたび、内容が再編集されて単行本『人生の「秋」の生き方 「後半の幸せ」とは何か』にまとめられ、PHP研究所から発行された。

寄稿者にはそれぞれプロフィールがついているので、各寄稿者がどのような人生を歩んで来たかが(ご本人がどのような自己認識でいるのかも含めて)よく分かる。テーマがテーマなので、作家や哲学者は当然それなりの文章を書いている。秋元康氏が書いている父との思い出が意外に(と言っては失礼だが)感動的だ。一方で立派な学歴、経歴、肩書きを披露している元官僚が、内容の全くない箸にも棒にもかからない文章を自慢げに寄せているのはまるで晒しものである。複数の書き手の作品が競作形式で一冊の本にまとまる面白さと怖さがある。個人的には、息子カツノリの性格を普通に自慢し、あの沙知代夫人との仲睦まじい様子をてらいなくのろけている、野村克也監督の天然っぷりがよかった。

さて、じつは本書のこの豪華な寄稿者のなかに、我らが島崎憲司郎氏がその名前を連ねている。『Voice』誌掲載時も相当に異彩を放っていたが、単行本化されてみるとド本流のメジャー執筆陣の中で「フライ作家」の肩書きの異端が際立つ。エッセイのタイトルは<「珍獣」の幸せ>。自身の苛烈な半生を軽々と笑い飛ばすシマザキワールドには、そこらへんの温室育ちのお坊ちゃんが尻尾を巻いて逃げ出してしまう凄みがある。そしてうらやましいのは、自ら「人生の前半はお先真っ暗でろくなことがなかった」と語る島崎氏の現在が、キラ星のような他の執筆者陣の中でも目立って明るく、気のあった仲間に囲まれて幸せそうなことである。

ちなみに本書に掲載されている島崎憲司郎氏のプロフィールは以下の通り。<1949年、東京生まれ。水生昆虫に対する豊富な知識と独創的なイデアで、斬新なフライフィッシングに挑戦している。また、フライフィッシング関連商品をトータルに開発する第一人者として知られる。著書に、フライフィッシングの立場で、従来とは異なる角度から水生昆虫の羽化を読み解いた『水生昆虫アルバム』(フライの雑誌社)がある。>

『人生の「秋」の生き方 「後半の幸せ」とは何か』、シマザキファンならずともおすすめです。