夏休みがおわった。

へんな話だが、わたしの場合、たくさんの人と〈仲間〉になればなるほど、ものすごく孤独を感じる。それはもう自殺したくなるほどの孤独だ。若いころは違和感があるくらいだった。歳くってきたら、胸の奥の穴ぼこが顕著になってきた。

たとえば国会議事堂の前で、「今わたしは12万分の1になった。」と意識するとする。お調子者のわたしは、その瞬間は盛りあがる。皆と声を合わせてきっちりコールする。誰かと目が合えば自分から笑いかける。坂本龍一氏がマイクを持って出てくれば、「きょうじゅー」って叫ぶと思う。素人のラップを心から恥ずかしいと思いながらも、身体くらい揺するかもしれない。

集団のなかで高揚すればするほど、ひとりに戻ると、強烈な穴ぼこが口を開けている。12万分の1になった帰り道に、丸ノ内線新宿御苑あたりの駅トイレで、便器に頭を突っ込んで何事かをうなっているおっさんがいれば、それはわたしだ。

おそらくはわたしも混ざりたい。でも混ざりたくない。そして混ざれないことも自分でよく分かっている。

だから昨日はオイカワ釣りへ行った。

そして今日は金魚釣りへ行ったのです。

今日の阿佐谷は渋かった。朝10時からの一時間で12匹しか釣れなかった。納得いかず。銀座へ行ってお茶をして、午後4時に阿佐谷へ戻ってきて、もう一時間。今度は8匹。近所の子供は朝3匹に、午後は2匹しか釣れなかった。わたし以上に、どうしても納得いかないんだ、という表情だった。夏休みがおわった。
今日の阿佐谷は渋かった。朝10時からの一時間で12匹しか釣れなかった。納得いかない。銀座へ行ってお茶をして、夕方に阿佐谷へ戻ってきて、もう一時間。今度は8匹。今日はだめな日だな。連れて歩いた近所の子供は、朝は3匹、夕方は2匹しか釣れなかった。わたし以上に、きわめて納得がいかない様子だった。今日でぼくの夏休みはおわりですか、と、うつむいた横顔が言っていた。
『フライの雑誌』第98号 シマザキ・ワールド13 島崎憲司郎 マシュマロブーム、北岡竿、この夏の収穫、ココロの舵 SHIMAZAKI WORLD13 text&photo by Kenshiro Shimazaki
話題号。『フライの雑誌』第98号
シマザキ・ワールド13 島崎憲司郎|
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SHIMAZAKI WORLD13。オリジネーターの島崎憲司郎さんによるマシュマロ誕生秘話、マシュマロ・ピューパのタイイングのコツと写真解説、オポッサムのコラムも。最近のバックナンバーではクロスオーストリッチ特集の第90号と同じくらい、いちばん売れている号。
text&photo by Kenshiro Shimazaki
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