大人への階段。

かなりむかしのこと。

ビートルパターンの背中の模様をスーパーリアルに表現しようと、苦心惨憺してタイイングしている先輩に、「でもビートルの背中ってふつうは魚から見えないっすよね?」と、ついかるく言ってしまったことがある。

先輩はがく然としたような表情で顔を上げ、ぷるぷる震えながらわたしを見つめ、声を振り絞るようにして、「おまえはフライマンの風上にもおけない奴だ。」と言った。

わるかったよ先輩。そこ触っちゃいけないとこだった。

その時わたしは、大人への階段をひとつ上がりました。

蒼い体験といえば「葛西善蔵と釣りがしたい」(堀内正徳/フライの雑誌社刊)
蒼い体験といえば「葛西善蔵と釣りがしたい」(堀内正徳/フライの雑誌社刊)