世の中は広いもので、〝いったん読んだものは、全部頭に入っちゃう。そして必要な時に必要なだけ、四次元ポケットみたいに取り出せる。〟という方が、ごくまれにいらっしゃる。不肖わたくしとお付き合いくださっている中に、そういうビックリ人間みたいな方が、4人いらっしゃる。その内の一人が、大岡玲さんだ。
大岡玲さんの最新著書、『不屈に生きる 名作文学講義 本と深い仲になってみよう』が出た。
マンガの『ワンピース』からクラ~い夏目漱石、「マザコン」スタンダール、ルソーへと悩ましく続き、「差別」と島崎藤村、言文一致の影に三遊亭圓朝の「落語」あり!と話は飛び、『巌窟王』、妖しき江戸川乱歩や、「ヘンタイ」谷崎潤一郎&川端康成と急展開。果ては宮沢賢治に「宗教」を見たり……。「神なき時代」を叫んだニーチェとシンクロした「弱き人間」の姿をピノッキオに重ね合わせ読み解くなど、大岡玲のハンパない読書量が血肉化されたでもでも「ゆる~く優しい講義」になっております。わっかりやすく、心に届く「のど越し」いい飲み物のような! …そして、このひとつなぎの「読書の旅」の終わりには、不朽の名作文学が「へえ~」の連発と「生きる延びる」知恵として脳内でよみがえるかもしれません。
(K・Kベストセラーズさんの惹句から)
わたしの好きな、大岡さんの既刊本『男の読書術』の系譜につらなる一冊かもしれない。すぐにページを開きたいが、今週末が『フライの雑誌』次号第108号の編集の山場だ。そいつをクリアしてから、大岡さんの手引きで本と深い仲になってみたいと思う。
そういえば、大岡玲さんと初めてお会いしたのは、真冬の管理釣り場だった。いま思うと初めての面会にあんな場所を指定したわたしがおそろしい。それに対して二つ返事でフライロッドを持って、極寒の水辺へえびす顔でやって来た大岡さんも、少しどうかしていると思う。(釣り人的にはふつうの動きだとしても)
『文豪たちの釣旅』が出た後の打ち上げでは、編集を手伝ってくださった福田ナオさんと大岡さんとわたしの三人で、都内のコイの釣り堀でいっしょに遊んだ。大岡さんの釣りは楽しい釣りだ。またいっしょに釣りたい。
きちんと努力していけばきっと事態は好転する。
少しはましな明日がやってくる
(『文豪たちの釣旅』 池波正太郎 水郷・江戸の面影はいずこに より)