●「もしもし」
○「おう」
●「げんき？」
○「まあ、なんとかかんとかな。そっちは」
●「なんとかかんとかだね」
○「もう年末だな」
●「もう年末だよ」
○「まじかー」
●「まじだよー」
○「お前いそがしいの？」
●「いそがしいっちゃあ、いそがしい。ま、でも御用納めが終わればひまかな」
○「あいつらは？」
●「んー、もう一年くらい会ってないな」
○「まじか。そういうもんかもな。みんないそがしいもんな」
●「こないださ、ひさしぶりにおまえんとこのホームページ見たんだけど」
○「ああ、会社のか」
●「そしたらさ、〝子どもが釣りへ一緒に行ってくれなくなった〟、って書いてあった。そうなの？」
○「うん。正確に言うと、〝子どもが釣りへ誘ってくれなくなった〟だな。お声がかからなくなったんだよ。子ども同士で勝手に釣りへ行くようになっちゃった」
●「まじかー」
○「糸の結び方覚えたら、お父さんいらなくなっちゃったみたい。糸の結び方なんか教えなきゃよかった。今年の夏休みがひとつの山だったな。今じゃひとりで釣り行ってるよ」
●「学校は川行くのダメって言わないの？」
○「一応ダメってことになってるけど、おれらだってそれくらいのときは普通に川行ってたじゃんか」
●「まあそうだよな」
○「だろ。川で死んだら淘汰されたくらいの話だ。死なれちゃこまるけどな。さいきんは例の沼とか行ってるみたいだよ」
●「あの沼か」
○「そうそうそう。お前がでかいバス釣ったあの沼だよ」
●「あそこだったら落っこちてもズボッと腰まで入るくらいか」
○「夜中じゅう〝助けてくれー〟って叫んでるくらいだな」
●「あそこまだバスいるの？」
○「いるなんてもんじゃないよ。だってお前今年の秋は毎日…（以下略）」
●「まじかー。行くかな」
○「おいでおいでおいで」
●「もう12月だなあ」
○「お前、何歳になった？」
●「なに言ってんだよ、お前と一緒だよ」
○「まじかー」
●「まじなんだよー」
○「あいつらにも電話してみるよ。あいつら忙しいようだったら二人でのもうぜ」
●「そうしよっか」
○「そうしようそうしよう。おれいつでもひまだから」
●「まじかー。じゃあな」
○「じゃあな」
●○「ばいばーい」
学校んときの同級生だったおっさんふたりの会話終了。
