宇奈月温泉と黒部川「排砂」

先日北陸へ行ったのは、今夏発刊の新刊単行本の打ち合わせのためだった。時間があったので富山県黒部市宇奈月温泉と黒部川のほとりを半日散策した。

北アルプスの峰々から清冽な雪融け水を集めて流れ下る黒部川の川岸に立つと、胸が洗われるような清々しい気持ちになった。こんな川を友として育つ子どもたちがうらやましいと心底思った。宇奈月谷の合流点、想影橋の下では昼間からイワナのライズも見つけた。

黒部川にある二つのダムでは、ダム底にたまった土砂をゲートを開けて一気に下流へと押し流す「排砂」を定期的に行う。6月29日、出し平ダムの排砂ゲートが開けられた。翌30日、続いて宇奈月ダムの排砂ゲートが開けられた。黒部河川事務所のwebサイトの「河川エリア・リアルタイムカメラ」で、苦しむ黒部川の今を見ることができる。

土砂に覆われた黒部川にもちろん子どもたちの遊ぶ姿はない。川は恵みを与えてくれるが、ヒトは与えられる恵みだけでは満足できず、さらに川から奪いたがる。子どもたちは黒部川がふたたび息を吹き返すその時まで、待っていてくれるだろうか。ライズしていたイワナはどこへいっただろうか。