定価の半分で売ってもらえないか、と著者は言った。

昨夜は、尊敬する寄稿者さんの一人から電話をいただき、長電話させてもらった。電話の間じゅう私は緊張のためにほぼずっと、直立する猿状態だった(ちょっとオーバーです)。

彼にはフライフィッシング史に残る著書がある。その発行時、定価の半分で売ってもらえないか、と出版社の担当者に頼んだそうだ。「自分が力を入れて書いた本なんだから、できるだけたくさんの人に読んでほしい。無理って断られたけど」。

私は、著者である彼の気持ちも分かるし、即答で断ったに違いない版元の気持ちもよく分かる。私だってできることなら、「フライの雑誌」と我が社のすべての単行本をセットにして、全世界の全家庭の郵便受けへ一軒一軒、ていねいにポスティングしたいくらいだ。押し売りならぬ押し読め。お代は読んでのお帰りでけっこう。あらゆる意味で無理だけど。

じつは学生時代、似たようなことをやったことがある。当時、自分でミニコミ誌を作っていた。作ったはいいが流通に困り、中央線の駅のブックラックへこっそり突っ込んで歩いた。たくさんのお金をかけて作られただろう美しい旅行パンフレットの隣で、私の貧相な雑誌はなぜか異様に目立っていた。捨て子みたいなものだが、あの後どうなったことやら。誰かいい人に拾われていたらいいな。

さて、前から思っていることをひとつ。エコロジカルでなければ企業にあらずというような社会の風潮の中で、あれだけ街頭で大量にばらまかれているフリーペーパーと、そこへの出広企業がなんら指弾を受けないのは、まったく資本主義的な欺瞞である。どんだけCO2出してんだ。

もうひとつ、私は毎日新聞を購読しているのだが、去年、毎日新聞がワンガリ・マータイさん(ノーベル平和賞受賞。またですか)を担いで「Mottainai」キャンペーンを展開した際、「Mottainai」という文字を刷った包装紙で新聞をくるんで宅配してきたときには、思いきり脱力した。それこそもったいないでしょ! と多くの購読者が突っ込んだに違いない。毎日新聞の体を張った自虐ギャグかと思ったくらいである。

地球を壊しているのはヒトだ。エコなどと軽々しく口にする知識人や企業を私は信用しない。