富士五湖のワカサギは放射能を調べていない。

これから秋冬を迎えて、ワカサギ釣りシーズンが本格化する。ワカサギは釣って楽しい、食べて美味しい、家族連れのレジャーには最適だ。本当に楽しみだ。

さて、福島の原子力発電所から降った放射性物質により、群馬県赤城大沼のワカサギから640ベクレル/kg、神奈川県芦ノ湖のワカサギから71ベクレル/kg、栃木県中禅寺湖のワカサギから175ベクレル/kgのセシウムが検出されている。

関東のワカサギ釣りといえば、山梨県富士五湖が有名だ。河口湖、山中湖、精進湖、西湖、本栖湖、どの湖でもワカサギ釣りができる。先週、山中湖観光協会へ電話して、山中湖のワカサギの放射能検査結果を聞いた。すると山梨県へ検査を依頼している、ということだった。

そこで『フライの雑誌』編集部では、山梨県へ電話した。衛生薬務課から農政部、花き農水産課へと電話がわたり、以下のように教えていただいた。

「山梨県では富士五湖のワカサギについて、放射性物質の検査は行っていない。山梨県内の水産物については、放射性物質の検査を行っていない。隣接県の状況の推移を見守っているが、今のところ山梨県は大丈夫だ、というのが山梨県の認識だ」(農政部花き農水産課

山中湖観光協会からの放射能検査依頼は、農政部へは届いていない、とのことだった。

山梨県は「隣接県の状況の推移を見守っている」というが、神奈川、群馬、栃木、三県のワカサギから、セシウムが検出されている。山梨県だけ、一度も測定していない。

ワカサギからは放射性物質が出やすい。関東一円に放射性物質が広がっているのが明らかな現状で、測りもしないで「安全です」と言われても根拠がない。測って初めて「安全」かどうかが分かる。

風評被害を作るのは、まさに行政のこうした緩慢な対応である。

個人的な感想だが、今回の山梨県農政部の対応には、山梨県内の水産担当部署として水産物の安心を守ろうとする熱意を感じられなかった。「…というのが山梨県の整理です」、「県知事の発表では…」を繰り返す。

群馬県榛名湖では、放射性物質の検査結果が間に合わないからという理由で、ワカサギの解禁を遅らせた。放射性物質の検査をしていない山中湖では、この9月1日にワカサギ釣りが解禁となった。このままいくと、河口湖でも10月1日に解禁となる。

風評被害を作りたくないなら、風評被害が出る前に測って、ほんとうの情報を開示する。原子力発電所からの、忌々しい目に見えない放射能被害へ対応するには、それしかない。(堀内)

山梨県の放射性物質検査の品目。海の魚よりも淡水魚のセシウム蓄積が強いことははっきりしているのだが、魚は一種類も入っていない。