球児、お前はよくやった。前田日明なら「おれが女だったら××させてあげてもいい」と言うだろう。みんな遠慮するって。
相変わらずほぼ毎日、川に浸かる日々を送っている。ほんの少しの時間でも毎日川辺に立つことを習慣づけるのは精神衛生上とてもよろしい。このところの私は、まっすぐな目をした現役オヤジである。
しかし今日のイブニングでは、妙な物を釣ってしまった。いつもどおり、いつもの竹竿にいつものソフトハックルを結んで銀バヤを釣っていた。銀バヤとはいえ、流れに対してのラインの角度とロッドの寝かせ方で、ストライクをとれる率がずいぶん変わる。鼻歌をうたっていると、流しきったラインに、ググン、と生物反応が。
アワせると抵抗もなく寄ってきた。これ魚じゃないぞ。じゃあ、なんだ? もう真っ暗になって手元さえ見えない中、引き寄せたティペットの先に、ケンタッキーフライドチキンの手羽先肉を2つ横並びにしたような、不思議なシルエットがぶらさがった。動かない。
カエルやコウモリは釣ったことがあるが、黒い影はそのどちらとも違う。なにより、さきほどはググンときたくせに、今はだらんと力なく垂れ下がっているのが、まるで土佐丸高校の犬神投手のアンダーシャツのように不気味である。負けるなドカベン。
けっきょく確かめる勇気もなく、んーっと顔を背けてフックを外した。トプン、と川に落ちたそれはピクリともしないまま、水中に消えていった。川には色々なものがいる。あまり詮索しない方がいいものもたくさんいる。