常磐の秋ヤマメ

常磐道をひた走り、今季たぶん最後の渓流釣りへ。秋の釣りはなかなかいい思いをできないことが多いが、今回はいい思いをしました。背中の盛り上がった、さびがかすかに入った秋ヤマメ。帰りに思いがけず地元の山栗をいただいた。ゆでてあるので栗ごはんにできないのは残念だが、美しいヤマメたちがライズする残像を反芻しながら、ひとつまたひとつと山栗の野性的な苦みを味わうのは幸せだ。フライマンでよかった。
10代のころは、嫌いな食べ物を聞かれれば「セロリと栗」と即答した。不惑のいまは栗は大好きになり、残るはセロリだけ。このセロリというやつ、とことん性悪である。なんでわざわざ、あんなくさくて繊維質の植物を食べなければいけないのか理解に苦しむ。
こじゃれた店によく「野菜スティック」という冷やした野菜数種類をグラスに突っ込んだだけのメニューがある。色々と便利なメニューなのでつい頼むわけだが、たいていはセロリが入っている。というか「セロリのみ」みたいな時さえある。後で取りのぞいたって、セロリの臭いが他のキュウリやニンジンに移っちゃっていて、「ウッ」という感じで、のけぞってしまう。
香味野菜全般がだめなわけではない。ニジマスのフェンネル焼きなんてものすごく美味しいと思う。栗を好きになったように、もっと年齢を重ねればセロリも好きになるのかも知れないが、今は想像できない。この先セロリを好きになるのと、工藤静香を無邪気だなと思う日とは、どちらが先だろうか。