昨年末、『本の雑誌』(本の雑誌社)が休刊するかも、という情報が流れた。というよりも、12月発売号の編集後記にそう書いてあったので驚いた。みなさん驚いたらしく、今ひそかに、<がんばれ『本の雑誌』>ブームが起きている。幸せな雑誌だ。
毎号必ず買っていたわけはないが、かつて自分が気にとめて購入していた雑誌で、休刊または休刊宣言した雑誌をあげてみる。『話の特集』、『ビックリハウス』、『Angling』、『Fishing』、『ストリームサイド』、『タイトループ』、『噂の真相』、『谷根千』、『広告批評』、『Title』、『シンラ』、『ゴング』、『ファイト』、『ぶ〜け』、『編集会議』、『人間のくず』、『ガロ』、『YOUNG YOU』、『エロトピア』、『ヤングサンデー』、『ヤングロゼ』、『シティロード』、、。(読んでいる雑誌で個人情報ダダ漏れ。エロサイトのブックマークみたいなものか。)
自分で書いておいてなんだが、さっきの「毎号必ず買っていたわけではないが」という枕詞が、じつは曲者だ。購入から数年遠ざかっている可能性がある。作り手になったいま私は、「そんなこと言わないで毎号買ってくださいよ」と、耳もとでお願いしたい。
そういえば、素敵なロマンスグレーのおじさまから、「『フライの雑誌』は読んでたよウン。ひと味違うよな。もう30年くらい前だろうか。」といったご意見をいただいたことがある。もちろん30年前には『フライの雑誌』は出てなかった。遠い目をしたおじさまはなにか他の雑誌と間違われているのか、それともボケているのか微妙だったので、あいまいに流した。
読み捨てられる雑誌のように、私のページがめくれるたびに…、と歌ったのは1981年の松本伊代だった。雑誌なんてしょせん雑ぱくな紙の束である。ただたとえば、私の記憶のなかに今も『Angling』創刊の衝撃が色あせないように、大島弓子が載っているだけで買っていた『YOUNG YOU』を店頭で手にとったときの重さを忘れないように、読んでくれる人とひとときでも、それが幻想でもエモーショナルに繋がることができれば存在する意味があるし、雑誌はじゅうぶんに幸せであるとさいきん思う。
とこんなことを書いていたら電話が鳴り、次号から更新になる、新規定期購読のお申し込みをいただいた。友人の分と2冊分だそうだ。この距離感がうれしい。