新刊『バンブーロッド教書』が出版されて、おかげさまでたいへんなご好評をいただいている。この2年間というもの、遅れているこの本の出版のことがつねに頭の中から離れなかった。
締切ぎりぎりのころは、正直なところ文字通り毎日毎晩、バンブーロッド絡みの夢にうなされていた。たとえば、バンブーロッドでぺしぺしと尻をはたかれながら、赤色灯をつけたパトカーに高速道路を追われた夜がある。すでに状況がよく分からない。
竹でできた巨大な輸送機(映画「風立ちぬ」にでてたような)が地平線の向こうから飛んできて、なんでわざわざこんなへんぴな西平山を目がけて何機も連続して墜落してくるんだよー、と布団の端をかんで叫んだ夜もあった。
そのうちリアルに体調がおかしくなった。夜中に頭が痛くなって眠れないので、鎮痛解熱薬をのもうとした。クスリをのむ前になんとなく体温を測ってみたら、体温計が34度台の半ばを示した。測るのを失敗したかと測り直したらもっと下がっていた。あのときはすこしあせった。解熱剤をのんでいたらやばかった。なんかこわいので、体温計は棚の奥底へ隠した。
ともあれ、たくさんの皆さまの応援とご協力と、なにより発行が2年遅れてもあたたかく見守ってくださった読者の皆さまの寛大な心のおかげで、ようやく『バンブーロッド教書』が出版された。不肖の編集者のわたしも重い重い肩の荷をひとまずおろして、今年の年末を迎えられる。本当にありがとうございます。
さて出版されたばかりの『バンブーロッド教書』だが、もういくつかのご感想をいただいている。そのどれもが好意的なものばかりで、わたしは泣いています、ベッドの上で。うれし泣きだけど。うち布団だし。
『バンブーロッド教書』について、〝マニアックな本〟だという一定のご評価をいただいているようだ。この本はバンブーロッドの定番本になることを目指して編集した。
フライフィッシングのバンブーロッドに関して、その歴史から選び方、使い方、資料としても、この『バンブーロッド教書』ほど包括的に、かつグローバルな視点で記された本は、過去日本はもちろん、世界を見渡してもない。…かどうかはわからない。自分で言うことではない。
バンブーロッドへの〝愛〟にまみれつつ、あくまでニュートラルな視点を保つことをこころがけて編集した。世代を越えて、長く読み継がれる本になってほしいという気持ちをこめた。読み継がれてほしいその期間はすくなくとも目標30年間だ。
たしかにテーマとしては世間様から見ればマニアックなのかもしれないが、本そのものの性格としては、むしろたいへんにポピュラーで、スタンダードな成り立ちをしている。だから〝『バンブーロッド教書』はマニアックな本〟と言われるのは、うれしいようで、どことなくむずがゆい。
「マニアですねえ。」と言われると「いや、こんなのマニアじゃないから。」とつい反駁したくなるのがマニアの証明というものなのかもしれない。
年末年始のおたのしみに、どうぞ『バンブーロッド教書』をお手にとってみませんか。
書棚にさしておけば30年間は楽しめます。